出現! もう1人のマリー!

 

 マジソン星人との戦いもあったものの、京都でオフを過ごしていた健一・真理子夫妻に、幹冶から緊急連絡が入った。

 なんと、「宇宙刑事マリー」を名乗る女怪人が建物を破壊したり、男漁りをしているというのだ。

 しかも、行動の前後に、もう冬ではないのにトレンチコートとベレー帽を目深にかぶった謎の女の姿が目撃されていた。

 駅で売られていた今朝の朝刊にも「悪の女戦士、交番、宝石店を襲撃」と見出しがあり、ピンクの鎧の女戦士が重火器を使って宝石店を破壊し、ダイヤを盗む姿が映されていた。

「まあ、ひどいわ!」

「ベレー帽の女というのが気になる」

急ぎ帰還した二人は、幹冶から詳細を聞いた。

「健一、これは姐さんを陥れようとするワルモンダーのワナだぜ。それにオレとシャルルが探っているブツが絡んでいるようなんだ。それで来てやったわけさ。そしたら、おまえらが関東を留守にしたとたんに、さっそく尻尾をだしやがった」

 

 そして、次の事件はすぐに起きた。

銀行が襲われたのだ。しかし、襲ったのは『宇宙刑事マリー』を名乗る鎧の女ではなく、通常の怪物だった。

 そこに飛び込む宇宙刑事マリーとケイン!

ところが・・・。

「出たな、悪の黒幕!このバケモノを使って銀行を襲うつもりだったんだな!」

かけつけた警官たちに包囲されてしまった。

「ちがうわ!」

「おのれ、先輩の仇!」さきの交番襲撃で先輩を殺された若い警官が、発砲してしまった。

それか合図だった。

「撃て、撃て!」

警官たちの一斉射撃。

「キャア」悲鳴をあげるも、コンバットスーツはへこみもしない。

「警部、効きません。こいつはバケモノです!」

「本部に連絡、特殊部隊の増援を頼む」

ところが、警官がマリコを攻撃している間に、肝心の怪物は銀行を破壊してしまった。行員や客は健一の活躍でほぼ逃げたが、一人だけ逃げ遅れた女性が捕まってしまった。

「助けて〜」

「その声は!」

健一にはその声に覚えがあった。しかし・・・。その声の持ち主は・・・・。

 「ま、まさか・・・。」

「健一さん、助けて!」

それは、爆死したはずの悦子だったのだ。

健一は怪物を難なく倒した。手ごたえがまるで無い。あきらかに囮だ。

「健一さん・・」駆け寄る悦子。

「駄目だ健一、そいつから離れろ!」

幹冶が叫び、シャルルが飛び込んだ。

すると、悦子は宇宙刑事マリーの姿に変わったのだ。

 健一を襲うマリー。ありえない!

「健一、こいつだ!オレが探していた奴は!」

その頃、本物のマリコは対戦車ライフル攻撃を受けていた。貫通こそしないが、衝撃でボロボロだ。そして撃たれて逃げた本物と、健一と戦う偽者がついに鉢合わせ・・・。

どちらかわからなくなってしまった。

 「シャルル、どっちが本物だ?」

しかし、コンバットスーツ姿では匂いもなく、識別できなかった。

「ケン坊、わたしが本物よ!」

「何言ってるの、わたしがマリコよ!」

二人のマリーの攻撃?に健一はたじたじ。1人でも大変なのに・・・。

しかも、仮に偽者だったとしても、それが悦子かもしれない・・・。

 「エッちゃん、悪い冗談はよせ!マスクをとるんだ!」

しかし、二人とも素顔は悦子ではなく真理子だった。

「健一、そいつは悦子ちゃんじゃない。なぜなら本物はこのオレが保護したからだ。」

「何、幹冶がエッちゃんを?ということは生きているのは間違いないんだな?」

「そんなことは後だ。今はそいつを倒せ!」

しかし、目の前にいる二人の女戦士はどちらも最愛の妻、マリコの姿をしており、しかも自分を攻撃しているわけではない。

 

 健一は、転結を解き、突然ふんどし一丁になった。

「なにやってんだよ!」みな唖然とする。

すると、健一は再び転結し、一方のマリーに斬りかかった。

「ケン坊、なんてことを・・・・」

「黙れ偽者!」

「ケン坊、やっぱりわかってくれたのね・・・」

健一が斬り込むと同時に、反対の方にシャルルがすりよった。

 「見たか悪者!ぼくは真理子さん以外の女性には絶対反応しないのだ。最後は自分自身に聞いてみたんだ!」

「そうよ。わたしもケン坊のアレに反応すると、スーツを濾過してエネルギーが漏れちゃうの。」

 

「ばれては仕方ないな。二人まとめて死んでもらうわ!」

偽者は、こんどはモナミやユーカに姿を変え、襲い掛かってきた。

 「何だこいつは?いろいろな女戦士に自由に変身するぞ!」

偽モナミの電磁鞭に絡め取られた二人に高圧電流が・・・。スーツの回路がショートする・・・・。

 「ハハハ、死ね宇宙刑事マリー!お前を殺して、あたしが本物になるのさ」

勝ち誇る変身怪人。

絶体絶命のそのとき、物陰から突如二条のビームが放たれ、怪人に命中した。

 「あっ」と声を上げたニセモナミは、悦子の姿に変わり、

「ひどいわ健一さん・・・・」

どこからみても悦子そのものである。

健一も真理子もとどめをさせない。

「上手く化けたな!」

幹冶が撃とうとする。その手を跳ね除けて、トレンチコートの女がコートを開き、胸からビームを放った。と同時に、駆け出し逃げ去る女。帽子を落としていったが、その横顔は・・・。

「待ってくれ・・・」追う幹冶。

撃たれた偽者は、変身回路を破壊され、醜悪なメカ怪人になった。

 「おのれ〜」正体を現したメカ怪人はまさかりを振り回して健一と真理子を襲う。正体をさらした方が、化けているより遥かに強かった。ぶよぶよした体型は、自在に伸縮した。全身が蛇腹になっており、自在に体型を変化できるのだ。さらに、分泌した液体樹脂により肌を変えて、女性であればどんな体型、どんな顔にもなれるのであった。さらに、化けた対象の人物をよく研究し、なりきっていたのだ。

 しかし、夫婦の愛の絆で連携し、さらにシャルルの援護も受けて大逆転。

ウゲー!

 汚い悲鳴を上げる怪物。

しかし「二人と一匹でひとりの女を嬲るとは銀河警察も落ちたものね」と捨て台詞を。

「おだまり!」

真理子は詰め寄る。

「フ、あんたみたいな美形にはあたしの悲しみなんてわからない。呪ってやる。さあ、殺しなさいよ!」

「え?」

「わたしはブスに生まれただけで、才能も技術もスター性もあるのにさげすまれてきた、だからワルモンダーに改造してもらったのよ!」

健一も真理子も手が出せなくなった。

 しかし、その首がころりと落ちた。

 

「何やってるんだおまえら!」幹冶だった。

「こいつは、機動刑事AC48号の試作ボデイを盗み取って改造された怪人だ。」

「機動刑事?」

「そうだ。宇宙刑事のコンバットスーツはたしかに強力だが、中身は所詮生身の人間。しかし、ロボット刑事は自分の意思を持たず、敵にコントロールされる可能性がある。そこで、脳以外全て機械化したサイボーグ、つまり機動刑事を開発しようとした。ところが、被験者にも設計者にも逃げられてしまい、計画はパーになった。発案者のワルザック博士は、この技術をこともあろうにワルモンダーに売ろうとした。そして試作したサイボーグに裏切られ死んだ。被験者は女の幸せを求めて後輩宇宙刑事のおしかけ妻になって妊娠し、改造を免れた。姐さん、あんたのことだ。」

一瞬で表情がが曇る真理子。

「まあ気にするな。結局博士もいなくなり、いろいろ問題もあって、機動刑事計画は白紙になった。それに、宇宙刑事マリーを改造し、そのスーツを外装とした場合にのみ、本来の力を発揮できる設計だったので他人では無理だった。

しかし・・・。結局機動刑事は作られてしまったんだ。

爆発したサイボーグの女の子・・・。その子の首を、シャルルが見つけたんだよ。まだ脳が使える。助ける方法はひとつしかなかった。機動刑事のボデイに移植するしかなかった。ところが、手術が終わったそのとき、ワルモンダーに奪われてしまったのだ。なんとか首は奪回したものの、変身機能なんていうおかしな装置を組み込まれた上でおそらく劇的なブスの脳みそを移植されたのが、今倒したこいつだ。本物のほうは、より完璧なボデイを備えて完成したのだが、改造されたショックで脱走してしまった。早く調整しないと彼女の命が危ない。それでオレとシャルルが探していたのさ。」

 「そうだったのか・・・。でも早くエッちゃんを捕まえないと」

「それは俺に任せろ。それより、俺たちが予想している以上にワルモンダーは銀河警察の情報を知っていやがる。お前たちも気をつけろよ。じゃあな!行くぞシャルル!」

事件は解決し、幹治は帰って行ったが、こんなに深刻な顔のマリコを見たことがなかった。

「真理子さん、泣かないで。僕がいるから」

「ありがとうケン坊。わたしね、改造されたくないからケン坊のお嫁さんになったんじゃないの。それだけは分かって」

「わかっているよ・・・」

二人はひとつになった。

 

だが、その間にも忍び寄るワルモンダーの影。そして不完全なサイボーグのまま彷徨う悦子の運命やいかに。

 

続く。