SOS宇宙観光船クイーン・ダイアナ号
オニール星での任務を終えた僕は、バード星見学の地球への観光船クイーン・ダイアナ号に便乗し、真理子と真理男の待つ地球へと帰ることになった。宇宙刑事フィルゴーレことサエッタに別れを告げて。
事件は無事解決したが、真理子と彼女の過去、そして謎の美少女の存在が気に残った。
さて、バード星が友好星地球の観光客を招待した、地球初の民間観光客を乗せた宇宙船はオニール星を出帆し、銀河を超え、宇宙の旅を続けていた。
「みなさん♪あれに見えるのがオリオン座です」
添乗員さんが案内する。背が高く、栗色のロングヘアと真っ赤な唇の、妖艶な美女だった。
名前はジーナさんといった。
客たちは星なんてそっちぬけでジーナさんに注目している。
「みなさん、これから最後のワープに入ります。火星まで1時間。シートベルトを締めてね♪」
ジーナさんのアナウンスに、一瞬緊張が走る。やはりワープは便利だが危険と隣り合わせだから。
でも隣のおっさんはジーナさんと一緒なら死んでもいいと言っているし、ジーナさんのお尻を触りまくりだった。
そしていよいよワープアウト・・・・・。衝撃がはしる。
だがこの衝撃はワープアウトの衝撃ではない。衝突だ。
ワープ空間内での衝突は異次元地獄への旅となる。現にワープ空間では身元不明の惑星の幽霊船の漂流に出くわすことはザラだ。嗚呼、僕たちもその運命なのか・・・。
「皆様落ち着いてください。事故は起きてしまいましたがワープ空間は脱出しています。あれに見えますのが火星です。」
ジーナさんの落ち着いたアナウンスに一瞬一同胸をなでおろすが・・・。
次の瞬間、乗客たちは悲鳴を上げた。
「イヒヒ。俺たちは宇宙海賊ジャイキングだ。金目のものと女を出せ!」
「そんなことはさせないぞ。僕は宇宙刑事ケインだ。こんなこともあろうかと便乗していたんだ。覚悟しろ!」
「威勢のいいガキだな。だがこれを見ろ!」
「いやん、エッチだにゃ〜ん♪」
ジャイキングのボスは、ジーナさんの胸をわしづかみにして捕らえた。
だが
「宇宙刑事の坊や、わたしに構わず海賊たちをやっつけるにゃん!」
どうやらジーナさんはお仕事以外では語尾に「にゃん」とつけるのが口癖らしい。
だが、多数の客がいる上、銃を使うことが出来ない。壁に穴があけば乗客は宇宙空間に投げ出され死んでしまう。
そのうち恐れていたことが起こった。ついに海賊たちが乱射した銃で隔壁が壊れたのだ。
大パニックに陥る船内。今すぐ応急処置しなくては!船外に出られるのは僕一人だ。
犯人たちも苦しむ。だが逮捕どころではない。
しかし、海賊の中には改造人間もいた。そいつは空気がなくても平気なのでなお犯行を続ける・・・・。
ジーナさんが捕まり絶体絶命!
しかしそのとき、ジーナさんが叫んだ。
「坊やはすぐ船外活動するにゃん!この人はわたしがやっつけるにゃん!」
呆気にとられる目の前で、何とジーナさんは「転結」した!
形勢逆転、僕はその間に船外の補修を行った。
補修を終えて船内に戻ると、改造海賊とジーナさんの死闘が続いていた。
ジーナさんのコンバットスーツは、僕や真理子さん、それにサエッタのとは異なり、全身が装甲に覆われてはいない。上半身と手足だけで下半身は金属製のミニスカート、頭もゴーグルだけで、顔の下半分や髪の毛はむき出しになっている。
しかし、その戦闘力は真理子さんにひけをとらないものに感じられた。だが機械の塊のサイボーグ海賊にはやや分が悪い。
しかも、皮肉にも僕が宇宙船を修理したため、生身の海賊たちも息を吹き返してしまった。
ジーナさん大ピンチだ!
「あら坊や、戻ったの?選手交代にゃん!」
僕は宇宙船を傷つけないように慎重にサイボーグ海賊を追い詰めながら、荷物室に追い込んだ。
生身の海賊はジーナさんの敵ではなく、全員縛り上げられた。
そして、ジーナさんが駆けつけてきた。
「坊や、止めを刺すにゃん!」
「ジーナ・スイートフラッシュ!」
ジーナさんは装甲スカートをめくり上げた。
股間から不思議な光が。
目がくらんだ海賊。
ジーナさんは荷物室を切り離すと船室に飛び移り、
「あとはよろしくにゃん♪」と言った。
「よし、ケイン・グランスラッシュ!」
砕け散ったサイボーグ海賊。
ジーナさんは僕の直前に真理子さんとコンビを組んでいた宇宙刑事だった。そのときは、真理子さんも軽装タイプのコンバットスーツを着ていたとのこと。
なお、コンバットスーツは女性が着用するには負担が大きく、真理子さんのように特殊なエネルギーを持つ体質の人や、サエッタのように男性並みの腕力がなければ着用できないが、ジーナさんは自ら軽装タイプを開発・着用していた。彼女に言わせれば攻撃は最大の防御、髪と唇と太ももが武器なので隠すことないように設計したとのことだった。
僕はサイボーグ海賊を倒し、クイーン・ダイアナ号は無事月面に寄港し、そこで逮捕した海賊たちを銀河警察の留置所に引き渡し、ダイアナ号を見送ったのち、僕はビャッコライナーで真理子さんと真理男の待つ駐在所に帰還した。ジーナさんも一緒だ。
すると、そこには・・・・。
「あ、お姉ちゃん!」
「姐貴!」
そこには真理男を見ようと遊びに来ていたターミーとミーナがいた。
「はーい、マリコ♪おめでとニャン♪」
「あらジーナいらっしゃい♪」
抱擁するマリコとジーナ。まるで恋人同士のようだ。少し不愉快。
なんと、ジーナはターミー、ミーナとは三姉妹だったのだ。
「まったく、マリコがターミーの奴を補導してきたときは恥ずかしかったにゃん♪」
「ひどいよ姐貴・・」
「わたしは補導されてないもん」
「ケン坊、おとといまで幹冶くんとシャルルちゃんも来てたわよ。」
さぞ僕がいなくて寂しいと思ってたのに、みんな来てたのか・・・。
「ちょっと待って、僕の留守中に幹冶が・・・」
「何妬いているのよ。ターミーとミーナちゃんもいたから大丈夫よ。あ、わたしシャルルちゃんと同じベットで寝たけど。そういうケン坊は・・・。うーん、キスだけね。許してあげるか。まあケン坊には無理よね、Cは・・・。どうだったあの子♪可愛いところあるでしょ?女物の服は私があげたのよ。それからシャルルちゃんが超重要物を発見したの。幹冶クンが持ち帰ったわ。」
・ ・・・すべてお見通しだ。恐るべしマリコ!
そして翌朝、ターミーとミーナはオットラット星へ、ジーナさんはバード星へそれぞれ帰っていった。
おまけ
「止まりなさい、そこのへんてこUFO!」
ターミーとミーナのお釜型UFOは、銀河警察の交通巡視員に切符を切られてしまった。
「畜生、覚えてろよ!」
「まあまあお姉ちゃん・・・」
「へへ、このユーカ様のお手柄よ!」この巡視員はユーカといって、取り締まりに命を懸けていたのであった。
つづく。