キグナス大戦3話 キリカとサエッタ

 

 「キリカ・・・。キリカ・・・」

軽戦闘母艦キューテイアローに収容されたキグナス星の少女戦士サエッタはうわ言に「キリカ」という名をつぶやく。キリカとは何者か。

 

 

 微風のそよぐ草原。笑いながら駆けていく少年と美少女。

「ほら、キリカ、早く早く!」

「待って、サエちゃん」

仲良く手を取る少年と、輝くばかりの美少女。

少年は木に登った。

「わたしも・・・」しかし木に登るには体力的にも服装的にも美少女には難しかった。

「ほら、キリカ、掴まれよ」

必死に手を伸ばす美少女を引き上げる少年。めでたく並んで太い枝に座った二人。眼下には果てしなく広がる美しい草原。幸せそうな二人。

 「キリカのことは、どんなことがあっても俺が守ってやるからな。」

「ありがとう♪」

しかし、その幸せなひと時は長くなかった。

「こら、サエッタ!またお前か!姫をこんな危険な目にあわせおって!さっさと降りて来い!剣術の稽古の時間だ!」

「畜生、バカ兄貴・・・。キリカ、というわけだ。また明日!あ、ちょっと待て。」

先に木から下りた少年は、自分の肩を使って美少女を下ろした。

 サエッタの兄、サンダーだけでなく、城からは侍女のモチーナとアキーシャも姫を迎えに来ていた。

 「さあ、姫、帰りましょう。」

「待って」

キリカ姫は、自分の頭に飾られていた花をはずし、サエッタの頭につけた。

「サエちゃん、似合っているわよ。また遊んでね♪」

「キリカ・・・。」

「わたし、サエちゃんと遊んでいるときだけは普通の女の子でいられるのよ。それが一番の幸せ♪」

というと、サエッタに口付けして、モチーナ、アキーシャとともに城に帰っていった。

サエッタは見た目はどうみても男の子だが、本当は女の子だったのだ。

「ありがとうキリカ・・・。俺も・・・。いやあたしも・・・。お前だけがちゃんと女扱いしてくれる・・・。本当はもっと女らしくしなくちゃいけないんだけど、むかしからこの性格だし、親父や兄貴たちもああだし・・・。ほんとうにありがとう・・・・」

人知れず一筋の涙をぬぐった彼女は、兄を相手に剣術の稽古に励んでいた。

 

一方、美少女の名はキリカ姫。この星の次期女王であり、その愛と美のオーラでやがてはブラックホールの中のこの星を照らす女神にならなくてはならない。普通の人間としての幸せは求めてはならない存在だったのだ。

 

 二人の侍女についてもひとこと。

黒髪のロングヘアーの方がモチーナ。サエッタの父・マッキー将軍と並ぶもう一人の将軍・クラーク将軍の愛娘だ。赤毛のセミロングのほうがアキーシャ。一見、モチーナのほうがおしとやかでアキーシャのほうがおてんばそうに見えるが実は逆で、将軍の娘らしく、モチーナにはある程度の武道の心得があり、アキーシャは泣き虫であった。

 しかしクラーク将軍はあくまで娘を美しい女性として育てたのに対し、マッキー将軍は娘を、息子と同じように逞しく男らしく育ててしまったのだった。なお、この2人の母とサエッタの母は、キリカ姫の乳母であり、4人は乳姉妹の間柄になる。(女王は、無精受胎で姫を産み落とすと、すぐに精神体となって女神になるため、姫は乳母によって育てられる。)しかし、サエッタの母は早く亡くなったので、彼女は城を去り父に男で一つで育てられるようになったのだ。

 

 

 しかし今、キリカ姫、モチーナ、アキーシャはクリスタルパレスに追い詰められ、風前の灯だ。マキシマ軍団のヲーキー将軍たちの猛攻の前に、マッキー将軍父子は戦死し、クラーク将軍も重傷を負ったのだ。

 サエッタは亡き兄の形見の鎧に身を包み、女の身を隠し勇敢に戦うが、ついに・・・・。

そのとき、宇宙刑事マリーが現れたのだった。

 

次回からいよいよマリー参戦!おたのしみに。

 

つづく。