南海の大海戦(その3) 壮烈!細川忠之提督の最期

 

独逸のハインシュタイン大尉の殊勲により、ついに不死身と思われた敵戦艦を1隻撃破した。勢いづく地球防衛軍。しかし、それと時を同じくして、最大の航空戦力、機動要塞レキシントンが奇襲を受け、その機能を停止してしまった。ローレンス中将も戦死し、地球側の残存空母から発進できる艦載機では、敵にダメージを与えうる大型爆弾・ミサイルを搭載できず、専ら航空戦力は直衛に限られてしまい、一方的に敵円盤の攻撃を受けることになる。アメリカ艦隊の指揮は、戦艦ケンタッキーのサンダース大佐が継承した。

敵の機動戦艦は、強力な主砲、ビーム砲、ミサイルを搭載し、攻撃を受けた際は、亀のように甲羅のような装甲に包まれ全て弾いてしまうのだ。したがってこれにダメージを与えるには敵の攻撃中に大口径砲弾を命中させるか爆弾を落とすしかない。若しくは推進器に大型かつ強力な魚雷をぶち込むしかないのだ。耐ビームコーティングされているためメガ粒子砲は役に立たなかった。そのため「八甲田」自慢のビーム砲もその価値が半減してしまった。一方、巡洋艦以下の中・小型艦は、地球のものよりも劣っているため、次々と沈没していった。宇宙空間を航行できる能力と水上での能力を中型以下の艦に両立するのはさすがのグロテスターでも難しかったと見える。なお地球の艦艇は水上専用で、空を飛ぶことはできない。

 R級機動戦艦は、宇宙空間では宇宙船として、水上では戦艦として、水中では潜水艦として、空中では飛行船として活動できる万能艦艇だ。特に、水中での機動力が優れているが、全ての武装を使用できるのは戦艦体型のときである。また、大気圏内は一応飛行できるが、その動きは鈍く、また武器も艦首のビーム砲1門と爆弾だけで、的になりやすく、あまり有効とはいえない。水中では無敵といえる潜航能力、魚雷攻撃力、防御力を持っているが、ビーム砲と主砲は使えない。また当然ながら、陸上では使えない。

ロイヤル・ダークが転覆した今、4隻になった機動戦艦だが、その攻防力はすさまじく、一隻、また一隻と地球側艦艇は沈没していく。

「戦艦周防沈没・・・」「巡洋艦神通轟沈・・・」「戦艦シャウエッセン、航行不能・・」

「戦艦デラウエア沈没・・・」

「大変です・・伊太利亜艦隊が勝手に逃亡を開始しました・・・」

レキシントンが大破漂流した今、敵を上空から攻撃する術は無い。

「なんとか・・・なんとか肉薄出来ないものか・・・」

至近距離に近づいて魚雷攻撃すればあるいは撃破できるかもしれなかったが、熾烈な防御砲火と、巡洋艦エスメラルダの活躍でそれも阻まれている。

 しかし、敵も攻撃をしなくてはならないため防御装甲は常に閉じるわけにもいかない。

ぼちぼち命中段を受け、どの艦も損傷はしている。旗艦のダークロイヤルにも、魚雷が命中し、速力が若干低下していた。

「うう・・航空戦力が・・砲撃と同時に上空から爆弾を落とすことが出来れば・・・」

ルドリング提督は歯軋りして悔しがった。しかし、その直後艦橋を直撃した一弾に斃れ、壮烈な戦死を遂げてしまった。指揮を引き継いだ細川中将は、なおも突撃を敢行した。

「もう少しだ・・もう少し近づけば、我々の砲でも敵を貫通できる・・・」そして、ついに執念の一弾が、ダークロイヤルの飛行甲板に命中、発艦中の円盤を誘爆させた。

「しまった!炎上中の円盤を海中に投棄して防御装甲を閉じろ!」

ウインタービル大将が命令したそのとき・・・

 上空から突如、地球の最新鋭攻撃機「暁星」の編隊が攻撃してきた。はるかラバウルから飛来した、航空隊司令東七郎大佐直卒の精鋭である。だが、帰りの燃料は無い・・決死の攻撃だ。その執念の攻撃は、ダークロイヤルの飛行甲板転換装置を破壊した。

もちろん、航行も航空機の発着も、砲撃も差し支えない。だが、このダメージにより、水中に潜ること空に飛び立つことが出来なくなってしまったのだ。これにより、海面に敵旗艦を釘付けにすることに成功した。勝敗と無関係に、ウインタービルは宇宙や海底に行けなくなったのだ。なお、「暁星」編隊は9機中6機が撃墜された。残り3機は指揮官機を含め不時着水した。東大佐は、七海少将に拾い上げられ奇跡的に生還した。

 この攻撃成功により、勢いついた地球側はついに主砲の有効射程内に肉薄した。次々命中する砲弾。だが敵の砲撃も次々命中する。「ラビリンス」が大破し、ふらふらと浮上して戦線を離脱した。各艦これを打ち落とそうと盛んに砲撃するが、裏面の装甲は厚く(大気圏飛行中の機動力の弱さから、対空砲火で狙い撃ちされることを考慮して、下面は特に強固に作られていた)取り逃がしてしまった。

「レボリューション」は、ダークロイヤル同様、装甲開閉機構を破壊され、上部構造が破壊されたが、浮力は残していた。先に転覆したロイヤルダークも同様で、下面の装甲の厚さと浮力の大きさからなかなか沈没しないのである。

 

 しかし形勢は逆転し、今や地球側の大反撃が開始されていたのだ。

「いくぞ野郎ども!水雷戦隊、突撃ぃーーーーーっ!」

水雷戦隊司令官七海少将の号令で、駆逐艦がいっせいに飛び出す。中でも日本の誇る「のぞみ」型駆逐艦はその高速と強力な武装で次々と敵の巡洋艦、駆逐艦を撃破していく。しかし他の国の駆逐艦は、性能が劣っていたり、高性能ではあっても、巡洋艦なみの大型艦であったりして、思うように攻撃ができず、逆に次々沈められた。具体的には、アメリカの駆逐艦は優秀だが大型すぎ、他の国の駆逐艦は性能がとてもグロテスターに対抗しうるものではなかったのである。アメリカのものは類別こそ駆逐艦だが実態は軽巡洋艦であり、肉薄攻撃には向いていなかった。元々、空母をミサイルや潜水艦から守るのが役目だったからである。だが、駆逐艦よりももっと小型の、水雷艇に乗り込み、無謀ともいえる突撃を敢行した男がいた。水雷艇は外洋航行力が低いため、戦場までは機動要塞レキシントンに搭載されて到着したのだ。水雷艇とはいえ、第二次大戦の駆逐艦並みの大きさがあり、その搭載兵器も超高性能魚雷(水中ミサイル)であった。グロテスターの機動空母・機動戦艦はいずれも艦首に大口径の強力ビーム砲を一門備えている。宇宙空間や、防御装甲を閉じた状態では唯一の攻撃武器ともなり、これが命中すれば戦艦・重巡洋艦には大穴が空きへたすれば沈没、軽巡洋艦や駆逐艦なら蒸発してしまう。

 水雷艇長・・・ネイティブ=アメリカン、いわゆるインディアンのジョンストン少佐は、旗艦・ダークロイヤルの艦首の、ビーム砲口に突入した!ビームの発射と突入はほぼ同時・・。

ジョンストン少佐の水雷艇エバンズは蒸発したが、その場所は発射口・・。ダークロイヤルの前部はぐにゃぐにゃに熔けてしまった。自らの強力ビームをまともに浴びたことになったのだ。

「野郎・・・やったな・・・」七海少将の目に涙が光った。

「野郎ドモ、ジョンストンに続け!」各駆逐艦はジョンストン少佐に続けとばかり、体あたりや肉薄攻撃を敢行した。七海少将は、転覆してもまだ浮いており、魚雷や小口径ビーム砲で応戦する機動戦艦ロイヤルダークに肉薄し、なんと接舷して、切り込み隊を組織して自ら先頭にたち、乗り移っていった。艦内では激しい白兵戦が繰り広げられる・・・。

他の機動戦艦も、駆逐艦の体当たりや至近距離からの雷撃で大損傷を受けた。また、中型艦はほぼ全滅してしまった。

 遂にロイヤルダークに日の丸があがる・・・。七海少将が分捕ったのだ。

 

 一方、日本の誇る巡洋戦艦「八甲田」も甚大な損傷を受けて、主砲もビーム砲も使えなくなってしまっていた。司令官の細川中将も重傷を負っていた。

 

敵旗艦ダークロイヤルも今や浮かぶ標的と化し、炎上していた。

「むむ・・・地球の海軍力がここまで強力だったとは・・・。全軍撤退せよ!地上軍も機動戦艦に収容・・・。飛びたてない艦は自沈せよ」

ウインタービル提督は敗北を悟り、全軍に撤退を命じた。

転覆したロイヤルダークと、すでに逃亡したラビリンスを除く3隻の機動戦艦は海面から浮かび上がり、駆逐艦と円盤を収容、同時に濠太剌利大陸からの揚陸艇も収容して浮上していく。生き残った巡洋艦もこれに続く。

そして旗艦・ダークロイヤルが傷つきながらも、強引に防御装甲を閉じて飛び立とうとしたそのとき・・。東大佐の攻撃で、装甲開閉装置をやられたダークロイヤルは、人力でこれを閉じることを試み、ようやく飛び立てる目途がついたそのときである。ウインタービル提督は投げ出された。

「何事だ!」

見ると、全長220メートルの重巡洋艦・八甲田が舷側にめり込んでいるではないか!

細川中将は、自らと八甲田の死期を悟り、総員退去を命じて自ら舵輪をとり、敵旗艦との刺し違いを試みたのだ。ジョンストン少佐の行動にも影響を受けている。

 全長800メートルのロイヤルダークに食い込んだ八甲田・・・。

両艦とも、沈没は免れそうにもなかった。

 両軍とも、この旗艦同士の激突に、一切沈黙し固唾を呑む。

「何をしている・・私にかまわず、撤退を完了せよ!敵の追撃をうけるぞ」

ウインタービルは命令した。

「閣下も脱出を・・・」

「いや、わたしはこの敗戦の責任をとって艦と運命をともにする。ペナント君こそ今日までよくがんばってくれた。陛下になりかわり礼を言うぞ。さらばだ。」

「閣下、ごめん!」

ペナント艦長は、ウインタービルの鳩尾に一撃をくらわし、強引に脱出ミサイルに収容して空高く打ち上げた。大気圏を無事脱出すれば、冥王星のグロテスター本部に誘導着陸できることになっている。

「太子のためにも・・我が艦隊の再建のためにも・・閣下には生きていてもらわねばなりません。艦と運命をともにするのは、艦長たるわたしです・・・」

一方、他の乗員たちは既に総員退去していた。艦橋に残ったのはペナント大佐1人。ふいに、声がかかる。だとたどしい、翻訳機を通した声ではあったが。

「君がこの艦の艦長かね?」

「うう、貴様は?」

「わたしは地球防衛軍新日本帝國海軍第2艦隊司令長官、細川忠之だ。どうだね、わたしに君の星の美酒でも一杯ふるまってはもらえないかな?」

「何を!」拳銃に指をかけるペナントだったが、ぽとりとそれを落とした。

 

「貴君が高名な細川提督でしたか。思ったより随分とお若い。」

「ハハハ。君の言ったのは親父のことだね。わたしはまだ54歳だよ」

炎上する2大巨艦の艦橋に取り残された2人の海の男の間には、奇妙な友情が芽生えていた。

「互いに、同じ星に生まれ育っていたら、良き友になれたであろうに、残念です。」

「いや、わたしたちは既に良き友だ。残念だがわたしはもう長くない。そして君ももはや助かるまい。どうだろう、あの夕陽を眺めながら杯を交わすのは?」

「いいでしょう。取って置きのアンドロメダワインがあります。」

沈み行く夕陽の中、2人はまるで昔ながらの親友であったかのように語らいあった。

「別れの時が来たようだね。通信機を貸してくれたまえ。」

「七海少将に告ぐ。本艦は敵旗艦を大破させるも損害甚だしく既に本官以外は総員退去せり。水雷戦隊は、残存全魚雷を持って本艦と敵旗艦を処分せよ。」


新日本帝國海軍第二艦隊司令長官兼第四戦隊司令官
、細川忠之中将(上)と、
第二水雷戦隊司令官兼第1駆逐隊司令兼駆逐艦「望」艦長、
七海玄八少将(下)

「細川のだんな!正気か?今俺様が助ける!」

「いや、わたしはもう助からない。父上と由香に、わたしは立派に海軍軍人らしく死んだと伝えてくれ。さあ、早く撃て!これは命令だ」

「旦那・・・っ!」

海の荒武者、七海玄八の目に光るものがあった。

「てーーーっ!」

16隻の駆逐艦から、4本ずつの弔いの魚雷が放たれた。夕陽の中、白い水しぶきがあがる。

「よくやった・・。まもなく核融合炉が誘爆し、本艦は蒸発して水素だけを残すだろう。速やかに待避せよ。さらば祖国よ。天皇陛下万歳。・・・・・・・・・・・・。由香・・・。」

 

 そして真っ赤な夕陽が水平線に沈んだ時、再び太陽が昇ったかのような一瞬の光とともに、ダークロイヤルと八甲田は蒸発・沈没した。

 

 グロテスターは機動空母1、機動戦艦2その他多数を失い、残存艦の大多数は宇宙に逃亡した。

一方地球防衛軍は、機動要塞レキシントンが大破・全損したのをはじめ、日本を除く各国の主力艦はのきなみ沈没又は大破して、中将以上の者の大半が戦死するという壊滅的打撃をうけた。日本の誇る最強巡洋艦、八甲田も敵旗艦と刺し違えた。そして海軍の至宝、次期連合艦隊司令長官とも目された細川忠之提督も戦死したのだ。

だが、戦いはまだ終っていなかった。

 

「戦いはまだこれからだ!エメロード星人の意地を見せてやる」

巡洋艦エスメラルダだけが踏み止まり、なお抵抗を試みようとしていたのだ。

八甲田が沈没したとはいえ、まだ同型の磐梯、吾妻、鳥海、霧島、雲仙、阿蘇、櫻島が健在なのだ。さらに七海の水雷戦隊もいる。

「戦いは終った!無駄な抵抗はやめて降伏せよ。さもなくば、宇宙への離脱の時間を与えよう。」

「本艦は損傷のため宇宙には飛び立てない。この場で貴艦隊と刺し違えてでもエメロード星人並びに巡洋艦エスメラルダの意地を示す!」

無謀だ。地球側は初めて、この艦の名前と、所属を知った。

 しかし傷ついていたエスメラルダの突撃も空しく、完全に駆逐艦に包囲されてしまった。

「望」は接舷して、七海少将自らが乗り込んで臨検・拿捕した。

七海は驚いた。敵の艦長は、銀色の髪と緑色の瞳をもつ、まだ20代そこそこの若者だったからだ。彼は重傷を負っていた。

「虜囚の辱めを受けたくない。殺してくれ・・。それにわたしが捕虜になったと知られれば本国の同胞がグロテスターに・・いや、星ごと消されてしまうかもしれないのだ・・・」

 

「バカモノ。ならばこそお前まで死んでしまってどうする。悪いようにはせぬ。武人としての名誉も与えよう。」

「うう、イヤだ!」抵抗を試みようとしたプラドだったが、負傷している上疲労が蓄積し、しかも豪傑の七海に抑えられてガクリと肩を落とし、そのまま意識を失ってしまった。首にかけていたロケットが床に落ちる。中には、ツインテールに結んだ美しい少女のホログラフが入っていた。

「親分!(七海提督は、部下に自分をそのように呼ばせる。また、上官のことは「旦那」と呼ぶ)生存者はこの7名のみのようです。」

部下が生存者の捜索を行なったところ、重傷を負っているものの7名の生存者を発見、収容したが、そのうち1人は「望」移乗直後に事切れた。

容態が落ち着いたプラドを尋問する七海。その口から聞いたものは、エメロード星がグロテスターの奴隷星であったこと、この戦いで戦功を上げれば、自治領に格上されることになっていたこと、グロテスター艦隊司令長官ウインタービルに対する忠誠と尊敬、逆に怪人ワルモナイトに対する憎しみ、恨みなどであった。

自分たちの星を植民地支配する国家の艦隊司令に対し、なぜそこまで全幅の信頼と尊敬をできるのか。また、それと矛盾するかのようにグロテスターを憎むのか。おぼろげながら、グロテスターという敵組織の構造が判ってきたのである。七海自身も、3度に渡るウインタービルとの戦いで、彼が海軍軍人として尊敬に値する立派な武人であることは感じ取っていた。敵や、非支配星の軍人も認める人格者、ウインタービル提督。では何故彼等は宇宙征服などを企んでいるのだろうか。そして、同じ国家の所属とは思えない卑劣で下劣な怪人たち。そして明かされたそのボスの名、ワルモナイト。そう、ワルモナイトこそが、真に倒さねばならぬ巨悪であることを地球人類は、エメロード星人プラドの口から知らされたのだ。

 

一方、父の帰りを待っていた由香は・・・。

「おじちゃん、ウソでしょう?パパが死んだなんて!」

「ウソではないよおじょうちゃん・・。海軍軍人らしい、立派な最期だった。」

詳しい状況を聞かされた由香。

「じゃあ、パパを殺したのはおじちゃんだったのね!大嫌い!人殺し!」

なきじゃくる由香。その矛先は祖父、細川元帥に向けられた。

「お爺様は自分のあととり息子が死んだのにどうして平気なの?お爺様が戦いに行けばよかったのよ!由香、ママもいないのよ!パパも死んじゃったから、親のない娘になってしまったのよ!お爺様のせいだわ!」

さらに、八甲田の設計者、平野中将にも批判が向けられた。

「八甲田は絶対沈まないって言ったじゃない!」そして、叔父の細川春彦博士に向かってこう言った。

「わたし、パパを生き返らせてくるわ。隼人君、変身・合体よ!バルディ・チャージ!」

由香は七海や平野らの前で、人目をはばからず変身した。これにより海軍関係者は由香がバルデイーナであることを全員知ってしまった。

「叔父様、パパの遺体をわたしの胎内に入れれば蘇生できるはずよね?さあ、隼人君行きましょう!」

だが、隼人は変身しなかった。そして、由香の腕を掴んで止めた。変身していなくとも、バルディーナよりも腕力が上回っていた。

「離して!」

そこに、細川元帥が近づいて、仮面を剥ぎ取り、いきなり平手打ちした。この老人が由香に手を上げるのはこれが初めてのことである。

「バカモノ!忠之の名誉を無にするのか!」

「お爺様たち軍人や貴族は何かにつけて名誉,名誉って!女の子にとっては名誉よりパパの命のほうが大事なのよ、意地悪!」

「由香ちゃん・・・。」隼人は強引に口付けしてその口を塞いだ。

「・・・はやと、くん・・」

一堂の目に涙が光った。

「由香・・・。父上の言うとおり、敵旗艦と差し違え、その艦長と運命をともにして最期を遂げた兄上の死は、両軍の戦士全員の誇りでもあるのだよ。女の子で軍人ではない由香にはわからないかもしれないけど・・。」

「わかりたくもないわ・・」

「それに・・科学者として、またお前の体の設計者としての物理的・技術的見地から言わしてもらえば・・あの状況では、兄上の遺体は、核融合炉の暴発に巻き込まれ、完全に水素化して消滅してしまったはずだ。たとえわたしやお前の力をもってしても、生き返らせることは出来ない。」

「わかったわ叔父様・・。でもわたし・・やっぱり行くわ。隼人君、付き合ってくれるわね?叔父様、花束を用意して」

隼人と由香は、変身・合体して八甲田の沈没海域に飛んだ。そして、海底に潜る。

八甲田は春彦のいうとおり、蒸発して残骸すら残っていなかった。だが、沈没推定海域に潜った。

「お父様・・・由香よ。安らかに眠ってね・・・。わたしいい子にしてたわ。そしてこれからも。そして隼人君の子を産むわ」

「親父さん・・仇は必ずとります。グロテスターは僕が粉砕します。そして由香ちゃんを命がけで守ります」

忠之の霊に誓う二人。
 奇しくもその日は、由香の18歳の誕生日であった(6月20日)

 その後、細川忠之元帥(戦死後特進)の国葬が営まれた。長男の隆之は、鹿鳴館大学を休学して海軍に入隊した。グロテスター海軍の残党はまだいるためだ。

一方、約束どおり濠太剌利に駐留していた敵海兵隊は撤退、同地を奪回できたがその復興は前途多難であった。

 

一方、いずみは・・・。由香からプラドのことを聞かされ、面会に来た。

「プラド!生きていてくれたのね・・・。わたし、貴方が生き残ってくれただけでも幸せだわ」

「姫・・申し訳御座いません。この通りわが艦は拿捕されわたしは虜囚の恥をさらしております。こうして姫の御前に参るのも恥ずかしい・・・」

「そんなことない、そんなことないよプラド・・・。地球の人たちは皆親切でやさしいわ。貴方も退院したら、わたしたちと一緒に・・いいえ、わたしと2人で暮らしましょう」

「姫・・」

「エスメラルダ・・いいえ、「いずみ」と呼んで。もうエメロード星はないのと同じ。だからわたしももう姫じゃないのよ。だから、もう遠慮はいらないのよ」

「エスメラルダ・・。いや、いずみ!」

「プラド!」

2人は、恋人同士だったのだが身分が違うため、国王夫妻に結婚を反対されていたのだ。

「おお、姫様、プラド殿・・・」ガイガン老人の目にも涙が光る。

そこに、隼人と由香、細川博士がやってきた。

「プラドくん、いずみちゃん、良い報せだ・・・」

「いまさら、何か良い知らせでも?」

海戦の敗北により、エメロード星はより過酷な支配にさらされ、あるいは星ごと消されたと思われていた。また、いずみの存在をかぎつけた怪人たちの捜索から逃れるため、細川一家の庇護下に匿われて怯えながら暮らさねばならないエスメラルダ姫一行だったのだ。

 

「七海少将が、残党狩りで捕虜を捕らえ、グロテスター及びエメロード星の最新情報を得たのだ。ウインタービル大将は、敗戦の責任を取らされて、エメロード星総督に左遷されたとのことだ。」

「え、ウインタービル閣下が!」

プラドの顔色がみるみる良くなっていった。

「閣下が総督なら・・・エメロード星の同胞たちは奴隷扱いは受けないであろう。」

「プラドさん、いずみさん・・・今回の海戦で、僕たちの真の敵は、怪人軍団のボス・ワルモナイトという男だということがわかりました。僕と由香ちゃんは、この太陽系に展開するグロテスターを全て追い払い、グロテスター本星に乗り込み、ワルモナイトを必ず殺します。そして、エメロード星も開放してみせます。それまで、貴方達は僕たちが命がけで守ります。だから、希望を捨てないでください」

「由香もがんばるわ。いずみちゃんから借りたあの力も使って。」

由香=バルディーナには、エメロード星の国宝のエメラルド原石が取り込まれ一体化してしまっていた。そのため元々不死身に近い生命力をもつ彼女はますますパワーアップしたのだ。

「由香さん・・ありがとう」

「いいえ、わたしたちお友達でしょ?」

「細川博士・・僕も、僕も地球人の皆さんに協力してグロテスターと戦いたいです。でも・・僕が生きていること、そして地球軍に協力していることがワルモナイトに知られたら、エメロード星の同朋と、総督になったウインタービル閣下が・・・」

「では、これをつけて、髪を染めて、日本海軍の巡洋艦「和泉」艦長の、緑川武人大佐として頑張ってもらおう。」カラーコンタクトをつけ、髪を黒く染めたプラドは、生き残った6人の部下を従え、菊本大佐の手で修理されたエスメラルダ改め和泉の艦長に任命されたのだった。外装や塗装からは、エスメラルダとはわからないようになっているが、それは外皮であり、グロテスターからエメロード星が開放されたその時は、元の「エスメラルダ」に戻って帰ることになる。

 

 なお、ウインタービル大将は当初、敗北と敵前逃亡の罪で、死刑を宣告されたが,太子の鶴の一声で一命をとりとめ、怪人軍団の失敗で守護神クイーン・エスメラルダを失い戦略価値のなくなった辺境の星、エメロード星の総督に左遷されたのであった。

 

また、ロイヤル・ダークとエスメラルダを入手した地球技術陣は、ついに念願の外宇宙航行能力を得ることが出来たのだ。これまで、木星までが地球人類の限界で、冥王星にグロテスターの太陽系方面本部があることすら知らなかったのだ。

 

この戦いを契機に、地球は一方的被侵略から攻勢に転じ、また、敵の正体をおぼろげなりに掴んだのだ。

地球、エメロード星、そしてグロテスター本星(グレート・ロイヤル星)、いや宇宙全体の敵・怪人軍団長ワルモナイト!奴こそが諸悪の根源であることが今、はっきりわかったのだ。

打倒ワルモナイト!彼がこの宇宙に生きる限り、悲劇は繰返されるのだ。グロテスターによる無謀な宇宙征服をやめさせるためにも、絶対にワルモナイトを生かしておいてはならないのだ。

 

戦え、隼人!怪人どもを皆殺しだ!

 

終わり