悲しみの少女爆弾

 

 「ねえ、ケン坊!触ってみて♪」

「・・・」

「なに恥ずかしがっているのよ・・・キミの子よ♪」

 

 宇宙刑事ケインこと、篠田健一です。

恥ずかしながら、僕の妻、マリコは妊娠しました・・・。

スレンダーだったはずのマリコのおなかはぷっくらと張り出して、今にも生まれそうです。

 「ケン坊、わたしのことは心配しないで、宇宙刑事としての職を全うするのよ!」

そう諭すと、マリコは産婦人科に入院しました。

 丁度それと前後して、アクバー残党やワルモンダーの日本侵略が活発化し、宇宙刑事ケインはそれらを倒しましたが、やはりマリコの指示と支援がない中、苦戦することも・・・。

 まだまだ修行が足りません。反省します。

 そんなあ日・・・。

 ワルモンダー怪人を倒したとき巻き添えになって崩れたビルから、僕は一人の女の子を救助しました。

 聞くと、円盤の攻撃で両親が亡くなり、ひとりぼっちとのこと。アルバイト先のビルも崩れ、どうしていいかわからないとのことでした。

 困った僕は、マリコに相談しました。

 「いいんじゃない。ケン坊は料理へただし、味付け濃すぎて高血圧になりそうだから、その子にめんどう見て貰いなさいよ」 と意外なことを口にする真理子。

 「真理子さん、ぼ、僕は・・・」

「心配なんかしてないから・・・」

「よろしくお願いします」その少女、松田悦子(エッちゃん)はぺこりと頭を下げた。

 こうして妻の不在中に、少女悦子との不可思議な同棲生活が始まりました・・・。

エッちゃんはバイトをしながら短大に通いつつ、僕のご飯を作ってくれます。

 真理子さんには悪いけど、エッちゃんのほうが美味しいかも。

 そんな生活が1月続きました。マリコのお腹はますます膨れています。彼女が帰ってきたら・・・・。

 そしてある日の夜、ついに恐れていたことが・・・。

「ケン一さん、悦子のこと好き?」

「え、まあエッちゃんは可愛いし、美味しいご飯作ってくれるから・・・」

するとエッちゃんはいきなりキスを求めてきたのです。

「何をするんだエッちゃん!冗談はよせ!」

 僕は彼女を一発びんたすると突き放してしまいました。

泣きながら飛び出していくエッちゃん。

「待ってよ、ごめん・・・」

ところがそのとき、ワルモンダーの巨大ロボが。

「転結・宇宙刑事ケイン!」

 その圧倒的な火力、巨大さに大苦戦する僕。頼りの真理子さんはいない・・・。

しかし、ロボを操縦するワルモンダーのザンニーン博士も焦りを感じていた。

「宇宙刑事ケインめ!なぜ生きている!おのれ小娘、しくじったな。よーし、ワシがじかに踏み潰してやるわい!」

 ロボは僕を踏み潰そうとする。宇宙刑事ケイン、絶体絶命だ。

 そのとき・・・。

 「健一さん!貴方を騙してごめんなさい!私は・・・。ザンニーン博士の作ったサイボーグです。貴方を爆殺するための・・・。貴方が私を抱くと起爆するようになっていたの・・・。でも何時までたっても抱いてくれなかったから、博士が遠隔操作で・・・スイッチを・・。

 

 ワルモンダーのこと嫌いでも、私のこと嫌いにならないでね!」

そう叫ぶと、エッちゃんは博士のロボに飛び込みました。


そして・・・・。

 
大爆発が起き、ロボは爆発四散・・・・。

エッちゃんの犠牲により、東京は守られた。宇宙刑事ケインは、結局、何もすることが出来なかった・・・。
「エッちゃん・・・・」僕は男泣きに泣いた・・・・。


 そして、時を同じくして、マリコは僕の赤ちゃんを無事産みました。男の子でした。


まるでエッちゃんの生まれ変わりかのように・・・。
 僕たちは赤ん坊に「真理男」と名づけました。
 悲しく散った命と、新しい命。
 これ以上悲しい命を増やさず、新しい命を守る。
 命を守ることが宇宙刑事の使命であることを、僕と真理子はエッちゃんの霊と、真理男に誓ったのでした。





終わり。