55話 爆勝!南武高校

 

今期の関東高校アメリカンフットボール選手権神奈川県大会も早準決勝。川商を完封した昨年の覇者、南武高校が昨年準優勝の旺盛二高と激突!そしてこの試合、緒戦を体調不良(実はアレ)で欠場したヒロイン、東サトミ選手の今期デビュー戦。相手は旺盛、屈指の好カード。天気も良好!舞台も役者もそろい、いざキックオフ!

 

先攻は旺盛。サトミのキックオフ!

ガツーン!激しくぶつかり合う両軍ライン。南武高校センター、220センチ140キロの巨漢、大河原清の突撃に、旺盛センターの黒川は屈辱のアオテン・・・。

さらに、クォーターバックの黒田に炸裂する鉄人武田のサック!相模湖高校を100-8で撃破してきた旺盛も南武高校には敵わない。

早くも攻守交替!

「行くぞサトミ、陽一!」キャプテンのサトル以下、ベンチを飛び出す南武オフェンス陣。武田信彦も引き続き攻撃に加わる。

この試合、サトルは本来のQBに入り、サトミ、陽一を自在に走らせ縦横無尽のパスを決める。次々決る得点。行く手を阻む敵は、武田と佐藤兄弟が粉砕。ライン勝負は清の圧勝だ。

だが、黙って引き下がる旺盛ではない。あの名キャプテン、玄田鉄男の弟、鉄也を中心とするディフェンス陣は、ターゲットをサトミに絞って攻撃をかけてきたのだ。

 だが今日のサトミは絶好調。倒されても踏まれても、パンツをずり下ろされても立ち上がり、得点を重ねる。チームの牽引役はもはやサトミだ。

彼女の勢いに乗って、他の選手たちも次々得点していく。サトミはあまりもの好調に、いつもは苦手のディフェンスにまで出場し、相手に強烈なタックルをお見舞い!

しかしその衝撃で自分のパンツもずり落ちて可愛いお尻を晒してしまうことに・・・。だが、そんなことは全く気にしていないサトミであった。

「キャプテン、ボクにも投げさせて!」

「よし、陽一、頼むよ!」

OK♪」

2クォーター、南武高校は投手とレシーバーが交換された。陽一の華麗なパスがサトルに通る!いや、彼でなければ捕れない難しいパスだ。陽一のパスは、「マリポーサ・パス」と呼ばれる、球速は遅いが不規則に変化して相手ディフェンスから逃げるような、まさしく蝶のような動きをするパスである。翻弄される旺盛!

スーパーキャッチからサトルのダイビングタッチダウン!

サトミのキックも決る!

前半終了!さすがに旺盛だけあって完封は出来なかったが、倍の得点を重ねることが出来た。

「みゆ〜♪」

「サトミちゃん♪」

抱きしめあうサトミとみゆき。選手とマネージャー、道は違えど2人とも心からフットボールを愛する少女である。みゆきは、自らのフットボールへの夢の全てをサトミに託しているのだ。彼女の口癖は「サトミちゃんはわたしたち女の子の代表。サトミちゃんと一緒にわたしも走っているのよ」である。この言葉にウソはなかった。

 

一方、旺盛ベンチでは、柿崎監督が大激怒していた。

「貴様等、旺盛の意地に賭けても逆転しろ!南武は124番さえ潰せばなんてことはない。どんな手段を使ってでもやつらを潰せ!」

「押忍!」

特に鉄也は一昨年兄が負けた試合を見ているだけに(選手層の厚さから、当時1年だった鉄也はベンチだった)悔しさはひとしおであった。

「よし、オレがあのアマを潰してやる!」鉄也の目が怪しく光った。

しかし、後半もペースを握るのは南武。サトルと陽一も絶好調のサトミにボールを集める。だが・・・。

「キャーーーー!」

鉄也の、強烈なタックルがサトミに決った!さすがのサトミも悲鳴を上げて悶絶するほどのハードタックルだ。鉄也は、高校卒業後、プロレスラーになることが決っているほどの強い男だった。

「サトミちゃん!」

すぐにマネージャーのみゆきが飛び出して介抱する。

「みゆ、平気平気!」「サトミちゃん・・・」

 

しかし、これを見て激怒した男がいた。鉄人・武田信彦だ。信彦はサトル、サトミとは同級生で、3年間常に苦楽をともにしてきた親友であった。そして、他の誰よりも友情に厚い熱血漢で、かつて実力の劣る友達を馬鹿にした上級生を殴ってしまったほどだ。(ちなみに、その上級生の妹を彼女にしていて今では義兄として厚い友情で結ばれていることも有名)女ながらも、並みの男でも敵わぬ激しい戦いに身を投じるサトミの姿に励まされ、尊敬の念さえ抱いていた信彦。

そして、アメフト選手として目標にしていたのは、チームメートや先輩ではなく、鉄也の兄、旺盛大学の玄田鉄男選手だったのだ。鍛えぬかれた鋼の体で突進して得点を重ねるプレースタイルが自分にぴったりだったからだ。そして仲間思いで、負けても潔かった鉄男を心から尊敬していた。だが、彼をも上回るパワーを持つその弟が、男も女もない真剣勝負とはいえ、女であるサトミを狙い撃ちにしたのが許せなかったのだ。

「野郎!許せねーぜ!」

屈強の男でも立ち上がることは希な殺人タックルを受けても立ち上がるサトミに恐怖を覚える鉄也。だが、サトルのパスターゲットも、鉄也のタックルターゲットも、相変わらずサトミだった。

そして、サトルの絶妙なパスがサトミに!しかしこれを初めからマークしていた鉄也が迫る!

だが、信彦は最初からサトミを密着護衛していた。鉄也のタックルが決ったかに見えたとき、逆に地面に伏したのは鉄也だった。

だが、黒田と黒木がなおも迫る!しかし、サトミは既にボールを持っていなかった。

「しまった!」黒木が気づいたときは既に遅かった。エンドラインを陽一が突破、見事なタッチダウン。

ここで試合終了!今年の南武高校の勢いとサトミの絶好調を象徴するかのような、劇的な勝利だった。抱き合って喜ぶサトルとサトミ。

 

試合後、南武ロッカーを訪れた鉄也。

「武田・・・お前のあのタックルの意味が俺には良くわかったぜ。監督の命令とは言え、オレは恥ずかしいことをしてしまった」

「なーんだ、おまえそんなことを言うためにわざわざ・・・ハハハ、忘れたよ、試合が終れば同じスポーツマン同士じゃないか」

「武田・・・」

武田信彦・・なんという素晴らしいスポーツマンなのだろうか。サトル、サトミの活躍の陰には、2人を襲う敵を悉く跳ね除け、また誰よりも友情に厚いこの鉄人がいることを忘れてはならない。

「信彦♪今日もかっこよかったわ!」

「宏美・・みんな見てるからよせよ・・・」

「だっていいじゃん♪わたしら公認カップルだもん」

隠し事が大嫌いな信彦はこのように宏美との交際も完全にオープン。どこまでも豪快で晴れやかな快男児なのであった。

鉄也は、プロレス入団をとりやめ、兄と同じ旺盛大学を目指すことになった。すでに校内推薦は終ってしまったために自力での勉強が必要になるが・・・。彼もまた、信彦の厚い友情とスポーツマンシップに目覚めさせられたのだった。

 

強豪、旺盛に勝利した南武高校。だが、その彼等をつぶさに射抜く目があったことを、サトルもサトミも知らない。油断大敵だ・・・彼等を狙う伏兵が待ち伏せていることをまだ誰も知らないのだ・・・。

 

続く

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