メガボウラーVSラガーボーグ
夏である・・・。だが、ここ南武高校グランドでは今日もガツガツ当たって猛練習に励むアメリカンフットボール部員たちがいた。暑さ対策も十分だ。マネージャーたちがかいがいしく働く・・・。
ところで、フットボールにはアメフトの他、ラグビーとサッカーもある。体育の殿堂、ここ南武高校では当然ラグビー部も強豪のはずだったが・・・。
「おーい、上村・・・!」
「あ、デブヤン!」
「武田君、どうしたんだい・・・」
ラグビー部主将、「デブヤン」こと武田剛(武田信彦とは同姓だが他人)と副キャプテンの伊集院忠太が息を切らしてやってきた。
「どうしたの?」
「実は、鈴香ちゃんがドリンクを腐らせて部員たちが食中毒になってしまったんだ・・・」
「そうなんだ。オレ様は平気だったのだが・・・」
マネージャーの平鈴香がドリンクの管理を怠り腐らせてしまったのが原因である。アメフト部のマネージャーならありえないことだが、美人だが傲慢で手抜きが好きで、自分1人がヒロインでないと気がすまない鈴香は他の女子がマネージャーになるのを妨害し、女帝として君臨していたのだ。
「へへ、デブヤンはサリン飲んでも平気だろう?」
バキッ!殴られる忠太。
「で、用件は?」
「実は・・あの奥多摩工業が練習試合を申し込んで来たんだ・・・!」
「え、あの奥多摩工業が・・・!」
奥多摩工業高校は不良生徒の更生のため手に職をつけるとともに都区内から隔離する名目で作られた東京で最も治安の悪い高校であり、吉本工業高校と双璧をなす悪の巣窟であった。そしてラグビーの隠れた強豪である。練習試合では負け無しなのだが不祥事のため本戦に出場できないことが多いのだ。彼等に比べれば吉本工業の生徒などおとなしい部類とさえ言われる、野獣に等しい人間たち、それが奥多摩工業高校フィフティーンだったのである。
「その・・部員を貸してくれ」
「でも補欠がいるじゃないか。」
「いることはいるが・・あの奥多摩相手じゃ通用しない・・・」
「でもラグビーとアメフトは似ているけど全然違うスポーツなんだよ・・」
「そこを何とか頼む・・。普段は補欠の伸男と上杉も使う。だからあと2人・・・、2人だけ貸してくれ」
「でも僕たちも練習あるし・・・」
「でも東兄妹なら、スポーツ万能だろう?何とか頼むよ・・・」
「てか、初めからサトル君とサトミちゃんが目当て?」
「まあそういうことだ・・」
「しかたないな・・・試合はいつ?」
「それが、明後日なんだ・・断ったり棄権したら奴等この学校を爆破に来るぜ。やつらは日頃から実習と称して鉱山を爆薬で吹っ飛ばして石灰石を採掘しセメントを作っているから爆薬や重機なんてお手の物だからな・・・」
「というわけなんだ・・サトル君、サトミちゃん、武田君に力をかしてやってくれないか?」
人のいいキャプテンの拓也は断れなかった。
「サトミ!聞いただろ?僕と一緒にラグビーの特訓だ!部の方はキャプテンに任せて行って見よう!僕たちのスポーツ万能ぶりを示す機会だし、たまには別のスポーツをするのもいいさ!」
「任せておいてサトル♪」
「サトル、サトミ!こっちはオレたちに任せてセイゼイ楽しんでこいよ!」
さて、ラグビーは15人のスポーツで、1〜8番がフォワード(主にスクラムが仕事で重量級)、9・10番がハーフ(10番のスタンドオフがアメフトで言うクォーターバック)、11以降が俊足のバックスである。キャプテンの武田は背番号1番、最前列のプロップ。副キャプテンの伊集院はラグビー選手としてはかなり小柄だが、小柄なほうが有利な9番スクラムハーフである。両軍16名の選手がスクラムでぶつかり合う下にもぐりこんでボールを掻きだし、スタンドオフにトスする重要なポジションである。なお、伊集院はこうみえて薩摩藩家老の子孫で大金持ちの坊ちゃんであった。
スポーツ万能の東兄妹はあっというまにラグビーの基礎をマスターしてしまった。
「武田君、僕たちのポジションは?」
サトルがスタンドなのは当然である。下痢のため入院している正選手より上手い。またその動きはクォーターバックとほとんど同じである。ただ、一つだけ注意しなくてはならないのはラグビーは絶対に前にパスしてはならないということで、これはスローフォワードと言う反則になってしまう。
問題はサトミであった。
俊足で当りも強いサトミはバックスか、又は6番、7番のフランカーが向いている感じであった。また、サトルとのコンビと言う点からはハーフが望ましい。だがハーフには副キャプテンの伊集院がおり、彼は体格から他のポジションは無理であった。一部実力のない選手の起用やアメフト部からの応援を受けている以上副キャプテンは外せない・・。
「サトミちゃんは、やっぱり背番号2番が似あうよな!」
「そうだよデブヤン♪」
「え、2番って・・・!」
2番はフッカーといってスクラムの最前列中央の最も危険なポジションであったのだ。
スクラムの時敵味方全員の体重が圧し掛かるポジションである・・・。
「よし、決まったな!」
「・・・・。よっしゃ、一著やるか!」
「そうこなくちゃ!」
サトミは2番のユニフォームに袖を通し元気一杯である。だが、それを冷たい眼差しで見る目があった。
「何よあの子・・・!ラグビー部の紅一点はこのわたしなのよ・・。見てらっしゃい!」
そして試合当日・・・
「オス!」奥多摩工業の選手はスクラムハーフ以外は全員190センチ台でフォワードは全員100キロ以上であり、一番背の高いロック(4・5番)は2メートル20センチもあった。
「・・・おっす・・」
「何びびってんのよデブヤン!いつもいばてるあんたらしくないわよ。いい?こうよ!
オス!」
「威勢のいい坊やだな。見かけねー面だが・・・。ただそのだらしねー長髪が気にいらねーな」
「ムっ!」サトミは髪を伸ばし防具も着けていないのに男と間違えられたのでむっととした。だが、むろん見間違えるはずはない。女と判った上での陵辱の予告宣言であったのだ。
ピー!サトルのキックオフで始まった試合。
鮮やかに決まる。普段はキックをサトミに任せているサトルだが、同等以上のキックを見せてくれる。
黄色/黒の横縞が邪悪な奥多摩工業高校、赤/黒が南武高校である。
「痛!」
ボールを追うサトミが痛がる。タックルは受けていない。ラグビーはアメフトと違いボールを持っていない選手にはタックルできない。では何故?
「ふふ。いい気味だわ」
なんと鈴香がサトミのユニフォームに針を入れておいたのだ。
そして、ついに出番・・スクラムだ!
サトミを中心にデブヤンと河田(カバ田君)が左右に、長身の桂谷兄弟がロックに、7〜8番が3列目について奥多摩工業の悪田、悪山、悪川らとがっぷり4つに組みあう!
「オーエス、オーエス!」ぐいぐいと押し合う両チームだが体格に優れた奥多摩が押し気味だ。このまま押し込まれたら屈辱のスクラムトライされてしまう。
しかも・・スクラムは、味方選手と肩を組み、さらにユニフォームを手で掴んで固定するのだが・・・。敵味方両軍の選手がサトミの胸や股間をどさくさにまぎれてまさぐるのである。しかも味方ハーフの伊集院がラグパンに手を掛けた。
このまま踏ん張れば相手に押されて負けてしまい、脱げないように踏み止まれば脱げてしまう・・・・。だがサトミは後者を選んだ。
「行くぜ!オーーーーーっ!」サトミの絶叫を伴う一押しに、ついに奥多摩工業を押し切り、掻き出したボールは伊集院がサトルへ!そして潰れるスクラムに敵のハーフは潰される・・・。哀れにも16人分の体重を受けた彼は退場したが・・・せめてもの慰みはその顔面をサトミの秘部で直接押しつぶされたことであろう・・だがこいつは強烈である。なぜならサトミは異常に臭いからであった。栗が大きいため運動により擦れて分泌物が出るためである。
サトルはそのまま独走トライした。キックはサトミがつとめた。これも決まり鮮やかに先制した。だが黙っている奥多摩工業ではない。
その本性をむき出しにして、サトミに、そして実力の低い信男と上杉に襲い掛かる。強いのに、一番弱い者を集中攻撃する、それが奥多摩のクオリテイであった。
「あ、めがね、めがね・・・」
めがねを叩き割られた上鳩尾を直撃された信男は伸びてしまった。頭脳は優秀だがプレーはイマイチの上杉もやられた。次男やりょうちゃん、タカシらもやられたがマネージャーの鈴香はイケメンの上杉しか治療しない。サトミにいたっては・・・
「ギゃー!」なんと傷口に島唐辛子液を塗られてしまった。
「あら、ごめんなさいねサトミちゃん♪」腹黒い鈴香・・・。
しかし人数がギリギリのため、皆無理して出場していた。今や五体満足なのは異常に体力のあるデブヤンと天才のサトル、そして要領よく攻撃を避ける忠太だけであった。
それに引き換え、奥多摩工業は9番が潰れたものの、それは補欠で真の9番は今日は19番をつけていたのだ。反撃により得点を重ねる奥多摩工業。しかし、負けず嫌いのサトミは、踏まれても、押しつぶされても殴られても蹴られても脱がされても突進し、キックを決めて反撃していく。
その阿修羅のような活躍にサトルたちも奮起し、ついに悪田、悪山、悪川を潰して大逆転、サトミのキックも決まる!
だが、そのキックを浴びた悪田たちはついにその邪悪な本性をむき出したのである。
「ケケケ・・・お遊びはここまでだ!」
な、なんと・・・悪田たちフィフティーンは、サイボーグだったのである。全員が機械の体にチェンジして襲い掛かってきた。
「サトミ、僕たちも遠慮はいらないようだね!いくぞ!」
「OK!」
「ビルド・アタック!」2人はメガボウラーに変身した。
だが・・・ラグビー選手を改造しただけあってラガーボーグはパワーが強く、しかも2対15では不利だった。
しかもチームプレーも完璧である・・・大苦戦・・・。 ラガーボーグは、デストラーゼのドクターオーレや水野博士が作ったのではなく、本部が宇宙の果ての巨大帝国から借り入れた傭兵であった。
ボールを蹴る、集団での体当たり、スクラム・・・2人は完全に包囲されてしまった。
「むちゃはやめろサトミ!」サトルの止めるのも聞かず突進したサトミだったが・・・・。
重量のあるラガーボーグたちに集中攻撃を受けてしまった。
そして彼等は股間のドリルを起動してサトミは絶体絶命・・・。
「サトミ!」サトミがピンチになるとサトルは激怒し、そのパワーが最大になる。
「よくもサトミを!その汚い手を放せ!」サトルの怒りの回し蹴りに吹き飛ばされるラガーボーグたち。だが・・・。
「嗚呼・・・」
「さ、サトミ・・・!」
巨大化してもやはり敵のほうが一回り大きく強かった。しかも、攻撃を受けた直後、随時手足だけを分離して攻撃をかわしてしまう・・・。
大ピンチだ・・・。ラガーボーグに首を折られるギガポーラー・・・だが。
「サトミ!おまえの命を僕に預けてくれ!」
「何言ってるのよ!アタシたちは生まれる前から一つの命よ!」
「ギガボウラー・バーストフラッシュ!」
ギガボウラーはわざとラガーボーグに組み付かせ、全装甲を爆発的に解除する荒業バーストフラッシュを敢行した。
「グワーーーー」
大爆発を起こしたラガーボーグ。大勝利だ。だが、ギガボウラーもまた裸になり、そして急速に縮んで傷だらけのサトルとサトミに分離した。
駆け寄る西本博士とみゆき。。
「ありがとうサトルくん、サトミちゃん」
学校の平和はこうしてまたサトルとサトミによって守られた。混乱により2人がメガボウラーだということはばれずに済んだ。西本博士とみゆきの工作も大きい。
戦いは終った。そして・・・傷だらけのサトミ。
「サトミ!よくがんばったね!」
「キャーっ!サトルったら・・・!」
サトルは嬉しさの余りサトミを抱きかかえてくるくる回ってしまった。
この奇跡の勝利は、揺るがない絶対の兄妹愛によって起こされたのだ。二人の満面の笑顔が青空に映える。
がんばれサトル、負けるなサトミ・・・!デストラーゼの侵略はまだまだ続くのだ。
続く