ピンポンパンポン・・・
1年C組1番、東サトルくん、おなじく2番サトミさんは至急職員室にお越しください。
「えー!これから練習なのに・・・」
「サトミ、まさかお前なにかしでかしたんじゃ?」
「なわけねーだろー!」ひじ鉄をかまされたサトル・・・。
 職員室に行くと、担任の吉田先生が怒っていた。
「ハーイ慎ちゃん(吉田先生の名前は吉田慎一郎)、どうかした?」
「慎ちゃん言うな!それよりサトルくん、これを見てくれたまえ」
サトルが渡されたのはテストの答案用紙だった。
「あきれてものが言えない!」
それは以下のような答案だった。
【英語】私は元気です→「I am
fire」(I am fまで書かれていてineと書くのが正解)余談だがこの問題は平成2年ごろ某体育大学の期末テストに本当に出た問題)
【日本史】鎌倉幕府を開いた将軍は「金正日」→正解源頼朝
【世界史】世界三大文明は、インダス文明、メソポタミア文明ともう一つは→「文明堂のカステラ」→正解黄河文明
【数学】台形の面積→そんなの知らない
【国語】作者の言いたかったことを15文字で抜き出しなさい→単に文頭の15文字
【理科】光合成で発生する物質を塩酸と回答
「一体キミの妹さんはどういう頭をしているんだね!」
「・・・。ボクに言われても・・・。それにしてもI am fier、私は炎ですってサトミらしいや、ハハハ・・・」
「こらキミまで笑うな!だって双子じゃないか。それにキミはこの試験、ほぽ全問正解、学年3位なんだぞ!」
「だってオレはサトルじゃないもん」
「こら、サトミ!お前のことを心配して言っているんだ。それに見ろ、お前だってやればできる。その証拠に保健体育は満点じゃないか!」
 「いいか、規則で赤点が4つ以上ある者は遠征に帯同できないことになっているんだぞ。そこで特別に追試をしてやるから、サトルくんはサトミに勉強を教えてやるように!」
 
 数日後、
追試のため、制服姿で登校するサトミ

「なんでだよっ!オレだけ追試だなんて・・!」なんとか試験を終え、練習に向かうサトミ。ところがそこにデストラーゼのサイボーグ登場!
 かばんをほっぽり出してセーラー服姿のまま立ち向かうサトミ。マンモロキックがズバリと決まる!

「やったね!」だが、敵のサイボーグは本性を現し怪人の姿になった。投げ飛ばされるサトミ。「もうこうなったらやるっきゃない!ビルド☆アタック!」サトミはメガボウラー・レッドギアに変身した。「いくわよ、ショルダー・タックル!」


 だが全く効かない。「次はキックだ!」「あれっ、いやーっ!何故?」
 キックが決まったはずなのに手ごたえが無く、逆に絡みつかれてしまった。
「キャァーーー。助けてサトル!」 鍛えぬかれ、かつサイボーグに変身していてもサトミは高校1年の女の子。頼りになるのはやはり双子の兄のサトルしかいない。そのころサトルは、アメフトの練習中だった。
 しかし、双子ならではの予知でサトミのピンチを本能的に悟った彼は「ごめんなさいキャプテン!サトミが!」キャプテンの西本剛はメガボウラーを作った西本博士の長男。もちろんサトルの正体も知っている。「よし、行って来い」
 堤防へ急ぐサトル。しかし!
一歩遅かった。触手から逃れようとするサトミ。だがその触手から強力なエネルギー派が放電!真紅のギアにたちまち皹が入り、そこを破って触手が貫いた。「ギャアアアーーー」


 そこに現れたサトル「サトミを放せ!ビルド・アタック!」メガボウラー・ブルーギアになったサトルの突進に怪人は一瞬ひるんだ。しかしサトルはこれにかまわずサトミを抱き起こす。「大丈夫かサトミ!」
 「うう、サトル・・・。おにいちゃん・・」
「よくもサトミを!覚悟しろ!」追撃体制に入るサトル。しかしそこに西本博士からの連絡が入った。
 「サトルくん、今はよせ。それよりもサトミくんの治療が先だ.今すぐ戻るのだ」
「判りました先生。サトミ・・・おまえだけに決して痛い思いはさせないからな。ボクがついているぞ、しっかり!」
 サトミを抱いたサトルは緊急帰還したのであった。

傷つき倒れたサトミを抱えたサトルは、最後の切り札テレポーテーションを使って西本研究所に飛んだ。メガボウラーのテレポーテーション能力は、自由自在ではない。2人の一方が機能を損ねた際、西本研究所内の電装装置にのみ移動できる。
 電装装置のドアが開く。駆け寄る西本親子や所員。
「サトルくん!サトミくんをはやく」
サトミの体を包んでいる赤い装甲は所々破れ、メカが露出しスパークしていた。今すぐ手当てをしないと命が危ない。
 「よし、緊急変身解除だ」コードを打ち込む所員。
「博士!ダメです。解除できません。装甲のメカと体のメカが焼きついてはがれません。それにコアの生命ゲージが下がっています」
 「何だと!しかしこのままではいかん。少し強引だが、サトル君、サトミ君の装甲を君の手ではがしたまえ!」
「わかりました先生」
 「私も手伝うわ」
「おお、みゆき、頼むぞ」
 サトルは、サトミのスクラップのようなギアを一枚ずつていねいにはがして行った。その傷跡をみゆきが応急処置していく。やがて、アメフトの防具をモチーフにした装甲は全て剥がされ、中からはところどころメカが露出したサトミの肉体が現れた。


提供・ROGOSU氏


 「博士!コアの生命ゲージの出力が不足し、生身の姿に戻れません。メカ部分も焼ききれていて、生きているのが不思議です」
「うーむ・・・。西本は傷口を丹念に調べた。装甲を突き破られ、体内各部に直接高周波エネルギーを送り込まれたことによる焼損が原因だった。幸いコアには傷が無く、死亡には至らなかったが、あまりもの損傷にコアからの生体エネルギーが不足し、再生不能に陥ってしまったのだ。ギアを破壊されることまでは予測できたが、内部に直接このようなダメージを受けることは想定外の出来事だった。


 西本「ギアはもう使い物にならない。予備のギアを整備して調整しておきなさい。問題はサトミ君本人だ・・・。」
 剛「親父!コアを取り出し、培養機にかけるしかないんじゃないか!」
西本「その方法なら確実に蘇生はできる・・・だがこの弱り方では再生に時間がかかりすぎてしまう。それに大量の輸血も必要だ・・」
 そのときである。
「先生!いい考えがあります。僕のコアを使ってください。たしか僕たちのコアは互換性があり、また合体しているときはコアも一体化しているはず。無傷の僕のボディにサトミのコアを入れ、僕の健康なコアをサトミに入れればよいと思います!」
とサトルが提案した。
「おおサトルくん、それは名案だ!しかし危険も大きい」
剛「ちょっと待てよ親父。コアっていうのはサトルたちの首から下の生身の肉体を圧縮したモノなんだろう?サトルは野郎だがサトミは女。そんなことしたら入れ替わっちまうんじゃないのか?」
みゆき「フフおにいちゃん。頭のほか、大事な部分もちゃんと別になっているから大丈夫よ。わすれたの?」
 西本「みゆきのいうとおりだ。だが、理論上は可能でも、難しい。サトルくんも共倒れになる恐れがある・・。ここは剛の言うように培養機に・・」そのときである。サトミが不意に呻き、失禁したのであった。
 「先生!サトミは生きたがっています!僕はあいつの兄貴です。覚悟は出来ています。すぐにやりましょう」
「よし、そうときまれば手術開始だ」
こうして2人の強化再生手術が開始された

素体に変身したサトルの腹からコアが取り出され、サトミの腹へ。サトミのコアがサトルへ移植された。二人にエネルギーと人工血液が送り込まれる。
 サトルの体の中に入ったサトミの鉛色にくすんだコアが、徐々に虹色の輝きを取り戻す。だがその輝きは弱弱しい。一方、サトルのコアを得たサトミの人工心臓が動き出した。
「成功だ!」
 歓喜につつまれる一同。そして1時間後、2人の体は生身のボディに再生された。
しかし!コアの出力がまだ足りないのか、2人とも目を開けない。
 「うう、やはり難しかったか・・・」
そのころ、こちらはデストラーゼ本部。
「よくやったぞデブレラ!メガボウラー・レッドギアを確かに破壊したのだな!」
ご満悦のキャプテン・テール
 幹部A「私も確認しました。黒煙と白煙を噴き上げ、崩れ落ちました!」
モーリー参謀長「とどめは刺したか!」
デブレラ「しかしそれが・・ブルーギアに残骸を持ちされれてしまいました」
モーリー「ばか者!西本の奴のことだ。生き返らせるに違いないぞ。爪が甘い!」
キャプテンテール「まあいいではないか。少なくとも今日明日は奴らは出られない。そこでだ!野郎ども、今すぐ世界スポーツ博を襲撃だ!」
「オー!」
 なんということだ!メガボウラーの2人が動けない今、デストラーゼの魔の手が世界スポーツ博に迫る!どうするサトル!

世界中の一流スポーツ選手のパネルやユニフォーム、道具を集めた世界スポーツ博。連日満入りの盛況だ。そこに宇宙海賊デストラーゼのサイボーグ・デブレラをリーダーにした一団が襲い掛かってきた。大パニックだ。破壊の限りをつくすデブレラ。
 しかしメガボウラーは現れない。

警察と、岩原軍団が駆けつけたが、デブレラにはかなわない。大ピンチだ。
 勝ち誇るデブレラ。だが、そこに・・!

「そこまでだバケモノ!オレ様が相手になろう。ハット・ハットハット・・・!」
「うう、貴様は何者だ!」


 デブレラが驚くのも無理はない。そこには漆黒のギアをつけた、巨大なメガボウラーが立ちふさがっていたからだ。
「オレ様の名は、メガボウラー・ダークギア!貴様をぶっ潰すためただ今参上!」
「何?メガボウラー・ダークギアだと!メガボウラーが3人いたなんてきいちゃいねー」
 テール「ひるむな!たいしたこつちゃねぇ。二人だろうと3人だろうとかまわねー。おまえの電撃でやっちめー!」「おう、お頭!」
 サトミの時と同様、その巨大な腕で絡みつき、ぐいぐいとギアを押しつぶそうとするデブレラ。だが「ぐへへへ」悲鳴を上げたのはデブレラのほうだ。逆に押し倒され馬乗りにされフルボッコだ。
 「うう、強い、強すぎる・・・・」突如現れた第3のメガボウラー・ダークギアの前に手も足も出ないデブレラ・・・。その間に岩原軍団は市民の避難誘導に成功した。
 強いぞダークギア!メガボウラーダークギアとは何者だ!

 その頃。
「頼むぞ剛・・・。だがおまえが戦えるのは1クォーターだけだ・・・。サトルくん、サトミくん、一分でも早く回復してくれ・・・」
 ダークギアの正体は、西本博士の長男で南武高校アメフト部主将の剛だったのだ。
そもそも、若者の生命エネルギーをコアに詰めてメカを動かすメガボウラーを開発したのは西本博士だった。当然、実験台には我が子を使った。そのとき長男・剛は今のサトルたちと同じ高校1年・16歳。娘のみゆきはまだ13歳だった。
 まず、肉体を圧縮してコアに詰め、これを機械のボディに移植してサイボーグ化すること、この一番基本的な部分には見事成功した。子供たちを実験の犠牲にして死なせるという最悪の事態は避けられた.続いて、これを解除する試験にも成功した。
「やれるぞ!」西本は確信した。だが・・・
続く戦闘・変形テストに入り、思わぬ事態が続出した。まず息子の剛のほうは、期待以上の戦闘力を発揮した。だがみゆきは・・・。どんなに調整しても規定の数値を発揮できない。それどころか変身解除した時に異常な疲労が。一方の剛のほうも、どういうわけか25分以上戦うと、自然に変身解除されてしまうのだった。原因はコアの出力不足で、もうすでに大きく成長している剛には成長の余地が少なく、そのため生命エネルギーが不足していたのだった。みゆきはより深刻だった。まだ中学生、しかも女の子であるみゆきは生命エネルギーは十分だったが、メカと一体化するだけの体力がなかったのだ。また、これを強化するため、再改造で変身後のボディを男性型に近いものとしたのも失敗だった。拒絶反応を起こしてしまったのだ。また、生命をエネルギーにする以上、どんなにメカを強くしても、元の強さにしか比例しないため、失敗に終わってしまったのだ。西本はただちにみゆきの肉体からコアを抜き取り、メガボウラー計画は一度は封印されたのだった。

 激しく戦うデブレラとメガボウラーダークギア。力と力の激突である。しかしややダークギアの方が押している。勝利は目前だ。だが突如ダークギアに力が入らなくなってしまった。タイムリミットが近づいてきたのだ。形勢逆転!あやうし!
 だが!
「そこまでだ。メガボウラー1号・ブルーギア=サトル!」「同じく2号・レッドギア=サトミ!」
 「何故だ!なぜ貴様らが!」
 「おおおまえたち!よく間に合った。あとは任せたぞ」
(フフ・・疲れた。時間稼ぎは間に合ったぜ。フットボールと同様、オレ様はラインだ。あとの攻撃は任せたぞ)
 「また死にたいか糞ガキ!」
デブレラの猛攻。だが、今日のメガボウラーの動きはいつもにも増して軽快だ。
「サトル!なんかいつもより力が出るみたい!あんたのコアのせいかな!」
「サトミ!僕もなんだか身軽になったきがするよ」
 二人はいつになく息のあった連携攻撃でデブレラを翻弄する。必殺の電撃も、二人で協力して逆流させた。
「うわーーーー」
悲鳴を上げて爆散するデブレラ。だがすぐに巨大再生した。
「よし!ぼくたちも合体だ!ジェミニ・シンクロン・ビルドアタック!」
 ギガボウラーは、難なくデブレラを倒した。
戦いはこうして終わった。
「しかし先輩がメガボウラーだったなんて・・・」
西本「危険な実験にはまず我が子を使わなくては成らなかったのだ。許してくれよ剛」
剛「水臭いぞ親父。おまえら、これからはいつでもオレが助太刀してやるぞ。だが見てのとおりオレのコアは不十分だ。1クォーターの守備しかできない。だからあくまで攻撃の要はおまえたち二人だけだからな」
 「はい!」
(しかしキャプテンもメガボウラーだつたなんて、ほんとうに頼りになるなあ・・・。)
 サトミ「先生、ということはミユも?」
西本「みゆきも一度は改造したが、メガボウラーとしては堪えられなかった。でもそのときのコアを培養・再生したものが君たちのコアなんだよ。だからメガボウラーとしての君たちはみゆきの子供だとも言えるな」
みゆき「パパったら・・」
 サトルとサトミは見詰め合う。
そして互いの腹を見つめる。
「僕たち、また一体感が生まれたな」「うん、そうだね!」
強い絆で結ばれた双子の戦士の連帯感・一体感はこの事件を契機にさらに高まった。
 どんな魔の手にも力をあわせ、戦えサトル!がんばれサトミ!



そのサトミを見て西本は思った「サトミくん・・・きみこそ奇跡のヒロインなのだよ・・。君がいなければメガボウラーは永遠に完成しなかった・・・」

「サトミ君がいなければ、メガボウラーは完成しなかった・・・」その理由は、以下のとおりである。我が子剛、みゆきをまず改造した西本は、まず人体のコア化、メガボウラー本体の制作には成功した。だが、次のような問題点がわかった。
@成長の余地が少ない成人に近い者の場合、十分な生体エネルギーが得られず、活動時間に制限があること。
A生体エネルギーは男性より女性のほうが強いこと。
Bメカの強さや運動能力が元の肉体に比例するため、女性や体の小さいものを強化することが難しいこと。
C元の体型・体格と異なるメカボディを与えると拒絶反応が起きること
であった。
 ところが、東サトミという少女は、女の子でありながら、並みの男子を大きく上回る運動能力・筋力・闘争心・戦闘能力を持ち、体格も並みの男性並みの大きさを持っていた。改造してメカを組み込んでも十分に堪えられる精神力と肉体スペースも持っていた。これだけでも半ば諦めていた女性のメガボウラー化が可能なスペックだった。その上、れっきとした女性のため卵巣等から発生する生体エネルギーは男性の比ではなかった。しかしそれだけではなく、彼女には双子の兄がいた。彼は双子であるため彼女と非常に体格が似通っており、さらに自身も彼女をも大きく上回る運動神経・体力を持っていたのだ。加えて2人ペアで行動する場合に欠かせないリーダーシップと頭脳も持ち合わせていたのだ。
 そして、剛・みゆきのときは計画はされたものの、それ以前の段階で開発失敗したため実行されなかった、2体による合体も難なく成功した。双子で顔や体格が似通っている上、遺伝子がほとんど同じため二人の人間がメカを介して一体化しているとは思えぬほどのシンクロを果たしてしまったのだ。というより本人たちは生来、二人は本来1人の人間なのが二人に分かれていると思っていたため、合体は予想以上にスムーズだったのだ。
 サトルは確かに優れた若者で、彼を素材にしたサイボーグはやはり天下逸品。だが彼を上回る体力・体格を持つ者は決して少なくない。剛もその1人だ。だが、妹のサトミの存在が彼の存在価値を何倍にも高めた。サトミもまたしかり。彼女は強い女の子だが、それは並みの男以上ということであり、最強クラスの男にはけっして及ばない。だが、サトルの双子の妹だということが彼女の存在意義を確実なものにしているのだった。それはメガボウラーとしてだけではなく、二人がプレイするフットボールにも言えることだったのだ。
 メガボウラーの理念は素晴らしい。したがって設計者の西本は偉大である。だが、東兄妹がいなければ、実用化は不可能だったのだ。