「ゴラっ!なにをたるんでいる!」

「申し訳御座いません・・・・」

「こら止るな走れ!」「なんだそのキャッチは!」

「・・・・・。」

 ここは南武高校グランド。アメリカンフットボール部の激しい練習が繰り広げられていた。だが、その中に1人、練習についていけずへばった選手がいた。

彼の名は五十嵐修。サトミたちと同じ2年生である。

 「オサム!お前はもう当りの練習をしなくていい。サトミと一緒に1年の筋トレの指導をしていろ!」

「判りました・・・・」

 オサムもまた、体育の殿堂南武高校の生徒。決して運動神経が悪いわけではなかった。加えて彼は特進科、つまり成績優秀の優等生でもあった。彼は中学時代は陸上の短距離ランナーであり、入部時の試験でも上位に入っていた。

 だが・・・。1年間の間に、他の選手は体も技術も伸びて行ったが、二人だけ入部時の記録から伸び悩んでいる選手がいた。1人は、「女」の部分がついに覚醒してしまい、女としての限界から伸び悩む我等がサトミ嬢。そしてもう1人がオサムだった。

 サトミは、伸び悩んでいるとはいえ元々の能力が高く、その上いまや押しも押されぬ県下ナンバーワンプレーヤー、東サトルの最良のパートナーであり、また、たとえ激しいぶつかり合いから外れたとしても、キッカーとしての能力はチーム1であり、活躍の場は確保されているのだが、オサムはよりによって天才のサトルと同じQB、しかも2番手、3番手QB3年生であるから、チーム内でのポジションは微妙だった。

 チームのお荷物となりつつあり、1年からもバカにされつつあるオサム。さて、そんな彼にも晴の舞台がやってきた。

 

 日曜日。南武高校グランドでは、京王大付属ペガサスを迎えての練習試合をすることになった。今回は新人戦の練習も兼ね、2年生主体のチームで対戦することとなり、臨時キャプテンに指名されたサトル以下、同期の桜総勢25(1年生5名を含む30名が出場枠)が、京王の2年と対戦することになった。

 この試合、思うことあってサトル・サトミの双子兄妹はそろってレシーバーを勤め、QBはオサムが務めることになった。かねてから兄妹が研究中だった合体攻撃を試したくなったからだ。本来サトルがQB以外のポジションに入るときは、先輩QBが投げるのだが、今回は3年生抜きの試合なので、2年内での2番手QB(全体では4番手)のオサムが投げることになったのだ。

 さて、3年生抜きのフレッシュなチーム。なかでも先発QBをおおせつかったオサムと、1年ながら2メートルの巨体を誇り、前キャプテン西本剛の後釜を期待される大河原清の二人は張り切っていた。

そして東兄妹も。

「ピー!」

大河原のスナップで、試合が開始された。オサムの投げたボールは、まるで見当違いの方向に飛んでいった。誰もが彼の失投をせせら笑った。だがそれは天才児サトルの作戦だった。無人のフィールドに、何故か現れてキャッチしたサトル。そしてその陰のようにぴったりと密着するサトミ。まるで合体して1人になったかのような二人に京王のタックル陣が挑むが、こんどは二人は素早く分離し、どちらがボールを持っているかわからなくなってしまった。そして、敵を振り切ったサトミは豪快に先制タッチダウン、続くキックも鮮やかに決めた。


キッカー・サトミ!

 その後もどんどん的中するサトルの作戦に、誰もが南武圧勝を思った。だが・・・。

オサムの失投がインターセプトされ、タッチダウンを奪われると試合の流れが変わってしまった。

 あせるオサムは失敗を重ね、ついに自ら足を捻って傷めてしまった。しかしそれを隠してプレーし続けているうちに、遂に敵にサックされ、そのまま動けなくなってしまった。

 サトミに支えられて退場したオサム・・・。心無い観客から汚い野次が飛ばされた。

「オサムちゃん気にするなよ!取られた分はオレとサトルで取り返すからね!」

「サトミちゃんは優しいんだね・・・。」

 


サトミと西本に支えられて退場するオサム

 その後QBに代わったサトルの反撃でなんとか引き分けに持ち込むことが出来たものの、第1、第2クォーターでの圧勝モードから追いつかれたショックは大きく、敗戦にも等しい敗北に終わってしまった。

 

 そしてその帰り道。失意のうちに土手をとぼとぼ歩くオサムに謎の老人が声をかけた。

「そこを行く君は南武高校鎧球部の者じゃな?」

気味悪いと思ったオサムは、無視したが、なおも老人は続けた。

「先ほどの試合、ワシも見ておったが、御主にはどうやら自分でも気付かぬ才能があるようじゃ。このワシがその才能を開花させて進ぜよう。」

「おじいさん、いきなり何を言うのです。」断るオサムだったが、何処からともなく現れた黒装束の男がオサムを襲い、連れ去ってしまった。

 それから3日ほど、オサムは無断で学校を休んだ。そして四日後の木曜日・・・。

その日も学校を休んでいた修は、放課後の練習に現れた。

 すると、目を見張るような能力を発揮した。

「やるじゃないかオサム!こんどの試合が楽しみだな!」

しかしオサムの目が怪しく光ったことに気付いたものは誰も居なかった。そして・・・。

 

 

事件は起きた。

 メガボウラー・ブルーギアらしい者が、警察の寮や軍隊の駐屯地を襲撃したという。だが当のサトルは勉強したり選抜チームの試合をしていてアリバイがあった。それにメガボウラーは二人でひとつ。ブルーギア単独の行動はおかしかった。そしてある日。

 久しぶりに、デストラーゼの怪人が現れ、町を襲った。

サトルとサトミは、直ちに「ビルドアタック」してメガボウラーに変身し、現場に急行した。熊の怪人がそこでは暴れていた。素早く応戦し、怪人を倒したメガボウラー。だがあまりにあっけなすぎる。

 するとどうだろう。怪人は巨大化して復活し、怪獣になった。

 「よし、ボクたちも合体だ!」

OK、サトル♪」ウインクして応えるサトミ。

『ジェミニ・シンクロン・ビルドアタック!』

 二人は腕を交差し、合体しようとした。そのときである。

サトルとは別の、メガボウラー・ブルーギアが現れてサトルを弾き飛ばし、サトミと合体してしまった。あっけに取られるサトル。

「どうなっているんだ?まてよ、あれがうわさの偽者か?しかし基地を狙う偽者が、なぜサトミと合体して怪獣と戦うのだろう?」

 サトルの疑念をよそに、ギガボウラーは怪獣との格闘を開始した。しかし動きがぎこちない。合体したサトミも何がなんだかわからず、意思の疎通が出来ないため体が分解されそうになってきている。

「あんたは一体何なのよ!あぁ、ドサクサにまぎれて・・」

合体に割り込んできた謎の偽者は、サトミの性感回路を刺激してきた。そのためバランスを崩したギガボウラーはついに怪獣に組み伏せられてしまった。

 「うわー」

 単体のサトルも怪獣を攻撃するがサイズが違いすぎる。

拒絶反応がおき、分解寸前になったギガボウラー。

「おれだよ、おれ。わかるかいサトミちゃん・・・・」

「まさか、オサム君?どうして・・・・?」

 「ずっと好きだったんだ。なぜ学業優秀で短距離ランナーだったボクが、高校でアメフトを始めたと思う?見たんだよ、中学でのあの試合・・。君と兄さんのサトルの活躍を。


中学時代のサトルとサトミ

 そしてレシーバーが女の子だと知って驚くとともに強い憧れを感じた。と動時に女の子に出来るならボクにも、と思ったのさ。でも結果はこのザマ。そしてこの前の試合ではみんなの足を引っ張ってしまった・・・。辞めようと思っていたとき、あのお方がオレに力を与えてくれたんだ。そして君とサトルが強いのも、この力、つまりサイボーグだからだと知らされた。おれは悔しかった。どんなに努力しても、女のきみに負けていたのは君が人間ではなく機械だからで、サトルの奴が天才なのもそのためだと知ったからだ。

でももう違う。僕もサトルと同等だ。いや、あのお方がもっと強く改造してくれたんだ。

そしてもう君を放さない。二度と分離せずこのまま一生合体して生きていくんだ!」

「何を気持悪い!それにこのまま生きて行くってどこでどうやって!」

「こうやってさ!」

いきなり立ち上がったギガボウラーは、怪獣と一緒になって町を破壊しだした。

「そうさ、ボクたちはこうやってデストラーゼの巨大サイボーグ・デスボウラーとして生きていくんだ。あのお方のために!」

「狂ってるわオサム君!」

「狂ってなんかない!もちろん町を破壊することはよくないことさ。でも君と合体できたことやサトルを超える力を得たことのほうがより素晴らしいことなんだ!」

 暴れまわるギガボウラー、いやデスボウラー!

抵抗するサトミの意思をよそに、いままでの屈折した人生を晴らすかのように暴れるオサム。サトルも巨人と怪獣相手ではどうしようにもなかった。

 そこに、メガボウラー・ブラックギアが駆けつけてきた。西本剛のビルドアタックした姿だ。単独でもメガボウラーの2倍弱の巨体で10倍近いパワーを誇る。だが1クォーター分の時間しか戦えないのが弱点だ。

 「先輩!」

「何をしている!お前らしくないぞ!」

ブラックギアの加勢を受けて、ようやく反撃を開始したサトル。だがやはり苦戦を強いられた。そのうち、ブラックギアのタイムリミットが迫ってきた。

「先輩、一か八か僕たちも合体しましょう!」

「しかし、オヤジは男同士での合体では十分なエネルギーが出ないといっていたぞ」

「いえ、一か八かやってみましょう。勝負は一瞬です。さあ、コアを開いてください!」

「おう!」

メガボウラー・ブラックギアが腹のコアを開いた。そこにブルーギアが飛び込む。

すると10倍の大きさに巨大化した。

 「行くぞ!」巨大ブラックギアは、まず怪獣と格闘した。しかしデスボウラーが邪魔をする。パワーは十分なものの、あまりものの重装甲に動きが鈍く、また男同士の合体のため女のもつ生体エネルギーが少ないため、本来の力が発揮できず、やはり苦戦。そのうち拒絶反応が生じてしまった。

 勝ち誇るデスボウラー。

だが、そのときデスボウラーにも激しい拒絶反応が起きた。

「今だ!」

巨大ブラックギアの腹から飛び出したサトルは、デスボウラーのひずみに飛び込んだ。

 だがその僅か前、デスボウラーは大爆発を起こし四散した。

拒絶反応のための爆発だった。いや、これははじめから仕組まれたことであった。

 このことにより、少なくともサトミをこの世から消し去り、あわよくばサトルも倒し、さらに町も破壊できるという、オサムのサトルに対する嫉妬心とサトミに対する恋心を悪用した、水野教授の卑劣な作戦だったのだ。

 ほくそえむ水野教授。地球人でありながら、デストラーゼに味方するこの老人の野望は、自分を見捨てた社会への復讐とともに、デストラーゼを乗っ取ってその首領になろうとする魂胆から来るものなのだ。

 その優れた頭脳とは裏腹に、卑劣で全く良心を持たぬ、根っからの救いようのない悪人なのである。

 拒絶反応がマックスになったとき、自爆するように爆弾が仕掛けられていたのだ。

オサムもろとも爆散してしまったサトミ・・・享年17歳。

ところが!その硝煙の中から、正真正銘、本物のギガボウラーが現れた!

 「真打登場!」

 軽やかに鮮やかに動き回るギガボウラーは、怪獣を倒した。

舌打ちする水野。

こうして今日もまた日本の平和は守られた。

 だが、なぜギガボウラーが登場したのだろう。

それは、爆発したデスボウラーのコアに、間一髪サトルが飛び込み、一緒に爆発してしまったものの、強く惹かれるサトルとサトミのコアが結合し、爆発のエネルギーを吸収して合体・復活したからであった。3人一緒に爆発したが、兄妹愛による奇跡の発動でオサムだけが死亡し、兄妹は合体して助かったのである。これが、本物の強さであり、兄妹愛であった。

 それにしてもオサムには気の毒なことをした。

1人の前途あるある若者の一時の迷いに浸け込み改造して利用し、死に追いやってしまうデストラーゼや水野に怒りを覚えるとともに、オサムのぶんまでフットボールに打ち込もうとオサムの墓前に誓い合うサトルとサトミの兄妹であった。