メガボウラー第18話 ある日突然

 

 血染めの公式戦デビュー

 

11月の連休・・・。きびしい合宿や練習をこなした南武高校アメリカンフットボール部の試合の日がやってきた!対戦相手は、大海大相模だ。

過去の対戦成績は3勝2敗。ほぼ互角の実力のチームだ。この日のために、OB戦、米軍チームおよび武蔵体育大学2軍との練習試合をこなしてきた。巨漢キャプテン西本剛の3年間の集大成が、今示されようとしているのだ。

 そして、今年の南武には、中学MVPクオーターバック、東サトルとその双子の妹!で、ワイドレシーバー兼キッカーのサトミの二人が加わったことにより、注目の的となっていた。

 コイントスの結果、先攻は敵方大海大相模だ。キックオフ。蹴るのは南武高校のジャンヌダルク、東サトミ♯2。神奈川県大会初の女子選手ということで、マスコミの注目もあつまる。ショルダー、メットなど5`にも及ぶ重装備に身を固めたその姿からは、16歳の女の子であることはちょっと想像がつかない。しかし、紛れもなく女の子だ。引き締まってコリコリとしているものの、やや丸いお尻がその証拠だ。

 スパーン。綺麗な放物線を描き、ボールは敵陣深く飛んでいった。相手チームの選手ががっちり捕球し、こちらに向かって突進してくる!

しかし、巨漢センター、キャプテン西本に阻まれ、少しも前進できない。セカンドダウン、あせった敵QBはロングパスを!しかし、これを東サトルシャープが何とインターセプト!そのまま中央突破して劇的なタッチダウンを決めてしまった。沸きに沸く南武応援席。そして再びサトミ登場だ。

 大歓声の中、再びボールを蹴るサトミ!やった!決まったぞ・・・・・・・。だが。

蹴り終わったサトミは何故かそこに蹲り、立ち上がることが出来ない。そして、双子の兄、サトルの肩を借り、やっと立ち上がったサトミ・・。その白いフットボールパンツの、股の部分は真っ赤に染まっていた・・・。そして滴り落ちる夥しい血。

・・・・・・・・。これが、東サトミ、16歳の遅い初潮だった・・・・・。

 担架に乗せられ、無念の退場をしたサトミ。試合のほうは723で南武が圧勝し、対戦成績を42敗のダブルスコアとした。

 

 せっかくのデビュー戦、フル出場できなかったサトミは無念で仕方がなかった。

「おめでとう!」病室には、女同士ということで、マネージャーのみゆきが寄り添っている。

「おめでたくなんてないよ!」サトミは涙ながらに叫ぶ。悔しい・・・。今までの特訓は・・・。そとて自分とは無関係の大勝。

やはり、女の出る幕ではなかったのか・・・。と。

 「そうじゃなくって、サトミちゃんは、今日から正真正銘、「女」になったのよ。でもびつくりしたわ。初めてだったなんて・・。」

(女になった・・・。か。・・・。)

 サトミは何時も悩んでいた。男でもない、女でもないような自分に。いや、男でもあり、女でもあったのかもしれなかった。そして、自分の中の男の部分の欲求不満、もっとフットボール選手として活躍したい、という気持ちと、女の部分の内なる戦いの日々・・・。正確には、昨日までの彼女は、男の子であり、女の子でもあった。しかし、彼女は生物学的に「雌」である以上、「女」にはなることが出来ても、「男」にはなれなかったのだ。そして、今日のこの出来事が、彼女を「女」として自他ともに認めさせるものになった。

 次の日から、サトミはしばらく入院し、練習を休んだ。翌週からは練習に復帰したものの、数試合棒にふってしまった。

結局、最終戦には出場できたものの、本人は当初MVPを取るつもりだったらしく、残念で仕方がなかった。

 そして、3年生が引退し、翌年度のチームが始動しはじめたある日。

 

 相模湖方面のハイカーが、怪物に襲われる、という事件が発生した。ひさしぶりのデストラーゼの侵攻だ。

サトルとサトミは、勇んで出撃していった。数々の強敵を倒してきた二人にとって、ちょっとぐらいのデストラーセの侵略サイボーグやロボットなど、物の数ではなくなっているのだ。西本の特殊チェロキーから出撃した二人は、メガライダーに換装して林道を爆走する。そして、今まさに拉致用の円盤にハイカーたちを連れ去ろうとする怪物と工作員を発見した。

 「待て!海賊め!メガボウラーが相手だ!」

 すぐに戦闘態勢に換装した二人は、敵のサイボーグ、今回は宇宙人改造の一般のとりたて特徴もない、デストラーゼ中堅のようだ、に突進。

サトルがまず、タックルでこの幹部を吹きとばした間に、正確な射撃をしながらローラーダッシュして工作員を倒して人質を解放したサトミ。

 すると、円盤から現れたロボットが隊長に合体(というより、着込んで)パワードスーツ状となり、再び攻撃してきた。

 そうこなくては!あまりの相手のふがいなさに物足りなさを感じていた二人に不足はない。

 絶妙のタイミングでサトミのキックとサトルのパンチが決まる。よし!ひさしぶりにコアボールアタックだ。二人のコアから取り出した円錐状のエネルギー体を合体させてアメフトボール状のエネルギー球体を作り、二人でパスやキックして相手の体にタッチダウンする技だ。

 ブルーギア・サトルのスナップをレッドギア・サトミがキック!エネルギー球は1直線に敵サイボーグに!そして大爆発・・・。のはずだが、

なんと敵の肩の装甲を吹きとばしただけで致命傷になっていない!そして、レッドギア=サトミは、体から白煙を噴出し、股間からは血を流して呆然と立っている・・・・。そう、今日はあの日から丁度1ヶ月・・・。

 そして、敵はダメージを受けたため、円盤にて撤退していった。人質は助けられたものの、なんとも後味の悪い結末だ。崩れ落ちるレッドギア=サトミを強制ビルドアウトさせて抱き起こしたサトルは、西本に緊急連絡して収容してもらった。

 研究室のメンテナンスルームに寝かされたサトミ。人口呼吸器と点滴を受けているが、全裸に、恥部にはエネルギーチェッカーが差し込まれた姿だ。その姿を見たサトルは一瞬どきっとした。毎日、間近手見ていて気づかなかったが・・・。妹の肉体は、明らかに1月前とは変化していた。

僅かに膨らんだ胸、全体的にふくよかになったボディ、逆に細くなったウエストや腕・・・・。さすがにキッカーだけあり、カモシカのような太ももの筋肉だけは変わらなかったが・・・。

 そして、入院や、退院後すぐの試合の強行出場で、理髪に行けなかったこともあるが、少し伸びた髪・・・。自分の妹は、こんなに可愛いものだったのか?まるで鏡に映った自分の姿と思っていた妹の体は、僅かの間にすっかり少女のものに変貌していたのだ。

 「サトルくん・・・。」

西本が説明した。

「サトミくんの体は、私の予想をはるかに越えて女性として成長している・・・・。このままでは、予定より大分早くコアを取り除かなくてはならなくなるかもしれない・・・。メカ部分も調べてみたのだが、大分負荷が掛かっている・・・・。拒絶反応も君の数倍発生している・・・。

とりあえず、ホルモンの安定剤の投与と、メカ部分についてはデチューンを施して延命するしかない。だが、それでももって1年半、君のコアの耐用年数の半分になる・・・。その前にデストラーゼを駆逐しなければ・・・・。君一人で戦うか、サトミくんに人間をやめてもらうかの選択を迫られることになる・・・・。まずいことになった・・・・。」

デチューン・・・。生体エネルギーの暴発を防ぐため、解放回路を取り付け、メガボウラーとしての出力を抑えて、変身前の体力とのギャップを縮めて、肉体への負荷を減らすためには、もはや避けて通れない。これからは、二人対等ではなく、サトル主体での戦いを強いられることになる・・・。だが、この間にもデストラーゼの恐るべき作戦は進められていたのだ・・・。

 どうする、サトル・・・・・・・・・・!