メガボウラー14(ライトニング姉妹。編その4)

 

 きっちんが攫われた・・・。梨香ちゃんを取り戻したものの、代わってきっちんが連れ去られ、メガボウラーの2人も大ダメージを。そして、謎の女ロボの破壊も迫る・・・・。西本研究所と、ライトニング姉妹。にとって、最大の危機が訪れた。とくにライトニング姉妹。は他に安田恵も行方不明になっている上に、リーダー(長女)の長沢祐子も負傷して収拾がつかなくなり、若いメンバーたちは狼狽するばかり。天下無敵のアイドル集団もリーダーとエースを欠くとこのありさまである・・・。そんな彼女らをはげまし、落ち着かせるのは、西本博士の娘、みゆきと卒業メンバーの綾とさやかだった。特に綾は、母となってから別人のように大人になっていた・・・。

 さて、診療所の地下の研究室には、3つのカプセルが横たわっていた。うち1つは人間用だが、2つはサイボーグ用だ。

西川梨香は、カプセルのなかに横たわっていた。その姿は、まるで11のリカちゃん人形のようだ。透明な半円のカバーがついたカプセルが、リカちゃん人形のパッケージと酷似していたのだ・・・・。乱入してきた乃木/神護コンビと野口が強引にこじ開けようとする。しかし西本と息子の剛らに制止された。

「無理にこじ開けると死んでしまうかもしれない。このカプセルは宇宙人のものだ。細工がしてあって爆発するかもしれないぞ」

「へぇ・・・、どっかんれすか?」「こわーい」

 一方、サイボーグであるサトルとサトミは、サイボーグであるがゆえ、頭部が切り離されて別なカプセルに入れられ、メカ部分の補修が助手らによって進められていた。とはいっても、ブロック構造を生かし、ケーブルの切れた太ももはそっくり別のものと取り替えられた。一方、頭の方は、といえば、修理されている自分たちの体を見物していた。しかし脳と体はケーブルでつながっているので、やはりショート部分に工具が触れれば、痛みを感じたりするのだ。

 ふだん、人間の姿のときとなんら変わらぬつもりで自在に動かしてきた体・・・。しかしこうして首だけになり、メスなどの手術用具ではなく、ドリルやマジックハンド、丸ノコなどの工具でいじくられ、組み立てられていく姿を見て、いてもたっても居られなくなってきた・・。

「これが・・。これがぼくの体なのか・・・・。」眼をそらすサトル。一方サトミは頭部も損傷したため、顔に液体人工皮膚を塗りつけられ、保護のため包帯でぐりぐり巻きにされていたためその醜い(作者と西本は美しいと思っているのだが・・・)自らの体を見ることはなかった。だが、男の子のサトルでさえ目をそむけ涙を流すそれを、性格・体型・体力とも男顔負けとはいえやはり女の子であるサトミに見せることはあまりにも残酷であり、結果的にはそれでよかったのかもしれなかった・・・。

 

 ところかわってここは月面観測所改めデストラーゼ前進基地。

 「なんだソミン!そのザマは!メガボウラーを仕留めるとか大口たたいた挙句、人質まで奪い返されやがって!

 いいか、あの娘はな、ザーマス星の貴族が高値で買い取ってくれることになっていたんだぞ!オレたちの8年分のカセギにも匹敵する額でな!」

宇宙にも金満・ロリコンな貴族がいたのだ・・。そして梨香ちゃんをメイド兼鑑賞動物としてペット化しようと企んでいたのだ。

 デストラーゼは宇宙征服など企んではいない。海賊なので、文明のある星から金銀財宝・人材を略奪するのが目的だ。したがって彼らの侵略はあくまでも前進基地の建設と、破壊工作のためにあった。また、金のためなら、雇われて戦いをいどんだり、奪った物を売り飛ばしたりもするのだ。どうしても困ったときは、開拓星で雇われたりすることさえあるのだ。

 一攫千金のチャンスをフイにしたキャプテンテールは怒っている。

「まあ、よいではありませんか。お頭の欲しがっていたきっちんをゲットできたのですから・・・」モーリーがたしなめる。

 「そうだったな・・。きっちんはこのオレ様の後添えにするために攫わせたのだ。洗脳に成功したら、首領夫人だ。てめぇらより格が上になることは覚えて置けよ!」すっかり上機嫌になったテール。しかし。

「おことばですがテール殿。その娘。をよ〜くみてくだされ・・・。今すぐ改造手術をしなければ、死んでしまいますぞ!ここは、このワシに改造させてくだされ。さすれば、そこにいるソミンなど足元にも及ばぬ戦士を作ることが出来ますぞ!」

 「何!」よく見ると、きっちんは全身傷だらけ。口から血をながし、アバラも数本折れている。生きているのが不思議なぐらいだ。当然だろう。生身でギガイキングを倒したのだから。

 実は今回の作戦、きっちんを攫うという点ではキャプテンテールと水野教授の意見は一致した。だが、きっちんに一目ぼれし強引に後添えにしようとしたテールに対し、水野は、弟のユウキと合体させることにより、より完璧なメガイキングを完成させることができると考え、どうしてもきっちんを必要としたのだった。つまり、うり二つの姉弟である鬼頭姉弟をメガイキングにした場合、うり二つの兄弟である東兄妹のメガボウラーと条件が同じとなり、コンビネーションもよくなるばかりか、拒絶反応もなくなる。更にきっちんはアイドルとは思えないほどの戦闘能力を発揮した上(この改造方法では、非戦闘体形時、生身の部分がかなり多く残るため、素材の運動神経が強く反映される。つまり、ダメな奴鈍い者をいくら強力に改造してもそんなに強い戦士は造れないのだ)弟の幽鬼は、洗脳不要なほどもともと邪悪な心をもっている。悪の最強合体サイボーグ兵士を作るのには、もってこいの素材だった。用済みになったソミンは、怪人か巨大ロボにでも再改造してしまうつもりだった。あの女のように・・・。

 

 東京に迫る女ロボ。髪を振り乱し、毒の汗を撒き散らしながら迫りくる巨体。だが、その姿はどこか寂しげで、泣いている様でもあった・・・。

 

 「・・・うっ・・・ピピ。ああ・・。恵ちゃん・・ゲッブフロント・。ううっ・きっちん・・・お月様・・・ド、ドリル・・はだか・・」

 いままで、冷静に様子を見ていたと思われていた飯田かおるが突然立ち上がると天井を見上げ、ブツブツと意味不明の言葉を喋りだし、苦しみだした。

「あ、カオルンの交信だ!」「いいらさんのぴぴぴなのれす」「また始まった・・」「大事なときに・・・」 

 飯田かおるは、ときどきこの「交信」と呼ばれる発作的振る舞いを見せる。周囲の者は、「宇宙人と交信している」とか言って冷やかしていたのだった。

だが、「恵ちゃん?きっちん?月?」西本は反応した。そして、天才的頭脳により、すべてを推理した。飯田かおるは、冗談とかではなく、本当に宇宙人の交信を傍受する能力を持っていたのだ。自分でも知らないうちに。というより、宇宙人の言葉なので翻訳できず、意味が不明でいままでわからなかったのだが、メンバーの危機という切迫した状況が、彼女に新たな力を与えたのだ。」

 「・・・ライトニング姉妹。のみなさん・・・。驚かないで聞いてくれたまえ・・。今江戸川を渡った怪物は・・・。安田恵さんの改造された姿だ」

「え〜!そんな・・・・」一堂絶句。

 「そして、今月では、きっちんがなじように改造されようとしている!」

一堂、驚きと悲しみで声も出ず、凍り付いてしまった・・・・。

 そのとき、地下室ではサトル&サトミの修理が終わり、緊急事態ということと、まだ人工皮膚が完璧でないことから、いきなりビルドアップした姿での復活となった。そして、その影に隠れるようにして、梨香も現れた。

「梨香ちゃん!」「みんな・・・。怖かったよ〜」泣き出した梨香。とりあえず再会を喜ぶも、恵ときっちんの身に迫ったより重大な事実に、さすがの梨香もだまりこんでしまった。

 そのとき、研究所の前に装甲車が横付けした。なんと岩原国防大臣だ。

 「西本くん!大体のことは聞いたぞ。都民の避難は完了した。怪物はわが軍にまかせて、君たちは弟たちとともに月に乗り込んでくれ!」

弟・・・。岩原裕太郎国防大臣の弟、慎次郎中将は、新たに編成された宇宙警備隊司令長官なのだ。だが、編成されたばかりでまだ実戦は経験していなかった。だが、慎次郎中将はじめ、隊員たちは陸海空軍および消防・警察からよりすぐられ、数々の修羅場をくぐりぬけてきた猛者ばかり。

 その主なメンバーを紹介しよう。まず「ボス」こと岩原慎次郎中将。もと海軍の巡洋艦部隊を率いた海の男。「長さん」こと井沢久大佐は温厚な人柄の老紳士で、海軍時代から慎次郎座乗の艦の艦長をつとめてきた。「長」さんとは艦長の「長」である。「組長」こと渡辺鉄也少佐は、ショットガンを扱わせたら宇宙一。軍人ばなれしたヤクザのような風貌からそう呼ばれる。ほかに、ゴジラに似た「ゴジさん」こと雷竜太、アイドルの松本聖子の夫の「ドッグ」こと神山正樹、巨漢の「横綱」こと渡部亨、

「海パン」こと松山勇作、「ボビー」こと瀬田正則、「ジムニー」こと三村国彦、「パスタ」こと荻原健一、そして裕太郎長官の息子、伸純など、猛者ぞろいだ。

新しく建造した日本唯一の武装スペースシャトル、「日本武尊」にのって、今こそ敵地に乗り込み初陣を飾ろうとしているのだ。その戦力として、メガボウラーとスタッフとして西本も乗りこんでもらうことにしたのだ。今までの戦いを全て見ていた永嶋名誉監督・・いや総理の意向だった。

 かくして今、メガボウラーははじめて宇宙に飛び立とうとしていた。日本武尊の最前部の攻撃ハッチにちょうど体育すわりの要領で格納された二人。

「なによ、これじゃ戦闘機か戦車じゃない」「俺たち、ついにロボット扱いかよ・・・・」(組み立てられる自分を思い出す)

一応人間なのだが、兵器として扱われていることに不満タラタラだったが、今はそんな場合ではなかった。なお、デストラーゼの通信を傍受できるライトニング姉妹。の飯田かおると、おなじユニットひまわりで活躍する安川瞳、西本親子も同乗した。

発進5秒前、4,321、・・・射出!東京タワーを改装したカタバルトから今、メガボウラーと岩原軍団がデストラーゼとの決戦のため飛び立った!

つづく。