メガボウラー13(ライトニング姉妹。編その3)

 

 その朝・・・。全世界は脅威を感じた・・・。

「キャぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・っ!助けてぇぇぇ!どうしてぷりちぃをいじめるの?離して・・・・・」

全世界のテレビ・ラジオ・その他のメディアに、甘美な悲鳴が響き渡った。宇宙船と思われる物体の動力室に、ピンク色のフリルのたくさんついたワンピースを着た美少女が、磔にされている。そして、アニメの怪人のようなカニの手をした宇宙人?が、そのワンピースの一部を切り裂くと、純白のブラが露出した。そのままハサミは下へ下へと切り裂いていく。かわいいイチゴのワンポイントの入ったパンティも露わに・・。その怪人の脇には、海賊のような連中が立っている。少女は失神した。完全に剥ぎ取られず、体にまとわりつくピンク色の布切れがかえって痛々しい・・・。少女の顔は、日本人なら誰でも知っている顔だった。西川梨香・・・。ライトニング姉妹。の中でも美少女度ナンバー1。のかわいコちゃんだった。それが何故・・・・?

 「ガハハハハ・・・・。我々は宇宙海賊デストラーゼだ。地球は我々のアジトとして明渡してもらう。このカワイコちゃんは可愛いから奴隷として凶悪星人に売り飛ばすつもりだ。ただし、36時間以内に我々の出す条件を受け入れれば、この娘だけは助けてやる。その条件とは、ひとつ、この星のウラン燃料を全て差し出すこと、ふたつ、鬼頭魔鬼という娘を差し出すこと、つまりはこの娘との交換だな。そして三つ目は、メガボウラーという戦士を処刑、もしくは予備を含めた全装備を引き渡すことだ・・・。オレ様は首領のキャプテン・テールさまだ。受け渡しは日本時間36時間後、月の観測所だ。そこはすでに我々の手に落ちているぞ、ガハハハ・・・」

 「冗談だろ?」「きっとライトニング姉妹。の新しい映画の宣伝だよ。きっとプリチィが囚われの身のお姫様で、きっちんとやっすぃ〜が正義のヒロインに変身して助けに行くんだ」「安田は悪役だったりして・・・」しかし、例によって誰も侵略の脅威を感じ取ることは無かった・・・・。

 

 さて、ここは西本クリニック。点滴を受け、人工呼吸器が着けられた長沢祐子。そばには野口とサトル、サトミが寄り添う・・・。

「うーん、ウーン・・・。のぐちぃ・・。ウチののぐちぃ・・・・」うわ言に野口の名をつぶやく祐子。超音波を立てて泣きじゃくる真理。

緊急招集をかけたメンバーたちも駆けつけてきた。「姐さん!」「ゆうちゃんだいじょうぶだべか?」「ながさわしゃん・・・えーん、えーん・・」

 結婚引退した次女の黒岩綾と渡米してシンガーソングライターとなった市川さやかも駆けつけた。しかし・・・・。姿を見せていないメンバーが・・。

囚われの身になった梨香ちゃんはともかく・・・。きっちんと安田の姿が見えない・・・。

 さて、長沢祐子の状態だが、派手な出血の割には致命傷は受けておらず、命に別状はないという・・・。しかし、大量の出血と全身打撲でしばらくは動けない状況であった・・。

 

 さて、世間はこのニュースを無視したが、数時間後、改めて未知の脅威を人類は知る。月面観測所は実際に何者かに占拠されており、自在に月に行ける地球人など皆無なので、やはり、宇宙人の仕業では、とあわてて大騒ぎになっていた。平和ボケもはなはだしく、この事実を政府は確認すらしていなかった。

それもありなん・・・・。先月の選挙で運動党が政権を奪取し、のーてんきで知られる永嶋重雄巨神軍終身名誉監督が総理大臣になってしまったのだから・・・。

 (2話、3話で活躍したあの人である・・)ちなみに、西本博士も党員となっている。そしてついに,某国の軍事施設がUFOに襲われるにおよんで、世界中は騒ぎ出した。「きっちんを出せ!」所属のゲップフロントミュージックに押しかける奴。「メガボウラーって何?」

 各国政府では・・。「ウランを全て集めることなど不可能だ」「いたずらに決まっておる」「いや、某国が攻撃を・・。これ以上の被害を避けるためにも供出するべきです」「しかし・・。仮に集められたとして、それを月に運ぶにはスペースシャトルでは小さすぎる・・・・。」「ウランを渡しても、はたして本当に少女を帰してくれるのだろうか?」などの論議が延々と繰り返されていた。

 

 そして・・。研究所では・・・。

「オイ、あんたら!おぬしらはロボットなのか?さっきオイラは見たぞ。」祐子の容態が安定してくると、野口真理がサトルたちにどきっとする質問を投げかけてきた。ほかのメンバーも、「さっき悪者がメガ・・なんとかって言ってたけど、それはあなたたちなの?」「かっこいいのれす・・・。てへてへ」

「メガボウルって食べれるんだべか?」「・・・」という具合に質問責めになってしまった。

 西本は、他言無用ということで、メンバーたちに正直に話した。

「サイボーグ?」「そんなのが本当にいるの?」みんな、驚きを隠せないようだった。そんなものは、漫画かテレビにしかないと思っていたからだ。

さらに、悪の宇宙海賊が実在することなど、過去の戦闘記録を見せて説明した。

「私たちも戦いたい!。梨香ちゃんを助けたい」「オイラのことも改造しろ!」などと言うメンバーも現れた。しかし、なっぴい、のののん、あいちんの三匹の子豚は、みゆきがつくったケーキをむさぼり喰っていた・・。

 そして、そのとき、研究所のモニターの画像が乱れたかと思うと、デストラーゼからの新しい通信が入った。

「私は・・・。デストラーゼの女戦士、ソミン。メガボウラー、この前はとんだ邪魔が入った。お頭が出した条件のうちの一つに貴様たち二人の首があったな・・・。ただもらうだけじゃ私のプライドが納まらない・・。そこでお頭の許可をえて、貴様らとサシの勝負をしたい。もし貴様らが勝ったら、小娘は返してやる。場所は、高知県沖の●●島に2時間後だ・・。逃げるなよ」ソミンの素顔は意外なほどあどけない可憐なものだったことに正直驚いた。

 そこには、透明なカプセルに全裸で閉じ込められている梨香も映っていた。

「よし! サトミ、すぐに梨香ちゃんを助けに行こうぜ!」サトルはやけに張り切っている。実はファンなのだ。しかし、その手をみゆきがぎゆっとつねっていた・・。

「よし、オイラも連れて行け!祐子の仇だ!」「アタシも!」

 「待て・・・。罠かもしれない・・。」西本が制止する。そして、新しい装備を収めた箱を手渡した。

「野口さん・・。君にはここに残って、歌を歌っていてもらいたい・・。それがゆゆたん・・。いや、長沢さんの励みにもなるし・・。敵は君がいる限りここを襲うことはない。ここには他にも患者がいる。君の歌声がみんなを救うのだよ」

「まりりん、聞いた?あんた正義のヒロインだよ」

「ヒロイン・・・!」真理は単純なのですぐ納得してしまった。早速、「♪ま〜りりんテレフォン、えっちをしましょ〜まりりんテレフォン、りんりんりんりんリン不倫♪」と熱唱。

 そのとき、ふと「ところで恵ちゃんときっちんは?」「きっちんの奴はいつもの気まぐれだと思うけど・・・。恵ちゃんは・・・」いまだ姿をみせないメンバーが突然気になりだしたのだ。

 

 「やはり、宇宙人は実在した・・。そして、約束を守らなかった・・・・」政府高官らは失望した。約束の時間より前なのに、千葉方面に女性型ロボが現れ、破壊活動を開始したのだ。これは、メガボウラーを関東から引き離し、その間に首都を制圧しようとする作戦だったのだ。同じ頃、サンフランシスコと地中海にも、宇宙海賊船が降下してきて艦砲射撃を開始した。米海軍とEU艦隊が出動して海戦となったが、一進一退の攻防がつづいている・・。

 

 さて、スカイパーツにチェンジし、かつ増加燃料タンクを背負ったメガボウラーは、四国上空に到達した。

「待っていたぞ、メガボウラー!」

待ち構えていたメガイキング。戦いの第Uラウンドは切って落とされた。巌流島の再現!

 先手を取ったのは、今回はメガボウラー側だった。メガタンクに変形して砲撃しながら突進するサトル。後方から走ってきたサトミはサトルを踏み台にしてジャンプ、手刀でソミンの鉄仮面を叩き割ることに成功した。はらりと落ちる仮面の下からは、長めのショートカットのサラサラとした髪と、あどけない素顔が現れた。しかし、そのあいくるしい顔とにつかぬ形相を浮かべて、電磁ムチを振るって襲い掛かってきた。ユウキは、今度は足から鎖を射出してサトルの足と結び、お互いに離れられないチェーンデスマッチを選んだ。至近距離からの殴り合いになった。パワーではサトルが上回っているが、打ち込む速度はユウキが上回っている。一進一退・・。ついに、メガボウラーブルーギアの胸の装甲に小さな亀裂が入った。ユウキの黒いボディにも、大きくひしゃげた痕が・・。生身ならとっくに死んでしまうほどの衝撃だ。

 サトミはムチの動きを縫って突進し、タックルした。吹き飛ぶソミン。しかし吹き飛びながら腕を180度折って骨に仕込まれたバズーカを発射する。これがサトミの顔面にモロに命中。フェイスガードは飴のように曲がり、衝撃でヘルメットがはずれて素顔が露出した。

「これで五分だな」二人の美少女戦士は、お互い可愛い素顔といかついメカの体という条件で戦いをつづけた。

 いままでの戦い振りからして、敵の構造はメガボウラーとほぼ同じようだった。そしてパートナーとほぼ同型のメカニックアーマーを自在に付け替えて戦っていることも同じ。ただ、違うのは、メガボウラーが完全に同型・同大なのに対し、ソミンのアーマーは一見ユウキと同じように見えて、胸に大きな二つのふくらみがあることが違っていた。素になったソミンの豊かなバストが、そうさせているのだった。そして、改造されたそこは、女性型メカのお約束で、強力な武器になっていたのだ。突如、ソミンの左胸のハッチが開く。バストは円錐型の中心に軸があり、周りに8つの穴が開いていた。ブルブル震えて回転すると、バルカン砲を打ち出してきた。頑丈な装甲で耐えるサトミだが、流れ弾のひとつが頬を掠める。すると、そこからは銀色のメカ繊維が露出した。

変身後は生身の部分は脳と性腺を除きすべてコアに入るのだが、顔の部分だけは人工皮膚と頭髪がついて、変身前と同じ顔になっていて、改めてメットでガードする構造になっていた。これは、少しでも人間らしくしようとする西本の配慮だった。

 怒り狂ったサトミはついにソミンを押し倒し、怪力で締め上げた。もだえ苦しむソミン。ギシギシ音をたててきしむアーマー。ついに、その怪力はアーマーを粉々に粉砕した。しかし、今度は右胸からくっついたまま強力なメガ粒子砲を放つソミン。あまりもの至近距離からの電撃に一部逆流したエネルギで剥き出しになったメカがショートするソミン。その衝撃は、直接のビームより強力で、メガボウラーレッドギアは砕け散ってしまい、こちらも素体サイボーグとなった。もだえる二人。無意識のうちに股間に手を当て押さえるサトミ。誘発したエネルギーがその手を払いのけて噴出する。その光景は、失禁とよく似ていた。

 弱点を見たソミンは、ショートしながらもサトミに電気アンマをかける。だが、ショートした火花が動力部に飛び火して出力が弱まり、ふらふらになってしまった。

「ユウキ!合体してケリをつけるよ」「おう!」

「オメガシンクロンバトルアップ!」腕をクロスさせた二人は、合体巨大化した。これも、ギガボウラーと全く同じ理屈である。

 よし、こっちも。「ジェミニシンクロンビルドアップ!」サトルとサトミも合体した。ギガボウラーとギガイキングの巨大戦が始まろうとしていた。

 そこに、割り込んできた者がいた!

「幽鬼!やめな!」

それは、ライトニング姉妹。の人気者で行方がわからなくなっていた鬼頭魔鬼、通称きっちんだった。

「きっちん(ちん)!」(サトルとサトミの声がダブる声)

「幽鬼、あんたたちの欲しいのはこのアタシなんだろ。無駄な戦いはやめて梨香ちゃんを返しな!」

一瞬ギガイキングの動きが鈍る。ソミンの意識とユウキの意識の疎通が乱れたのだ。「ねぇちゃん・・・・」しかし主導権をもつソミンの声がさえぎった。

「小娘ならそこに置いてあるからとっとともって帰りな。でもあんたの弟にとっては無駄な戦いでも、アタシにとっては借りを返す大事な戦いなんだ」

見ると、海岸の岩場に打ち捨てられているカプセルに梨香が入っている・・・。

 「きっちん、ここは奴らのいうとおりだ。梨香ちゃんを頼む()

 きっちんは、実はスラム育ちで、弟の幽鬼と二人でずっと生きていた。トップアイドルになり上がった姉と違い、弟はケンカやひったくり、万引きなどですさんだ生き方をつづけているうちに、宇宙海賊にスカウトされ、改造されてしまっていたのだ。だが、そのことをきっちんは知っていた。祐子にどやされながらも、ときどき番組をさぼっては、ユウキに金を渡したり職を探してやったりしていたのだ。

 しかし、そんな姉の心配もむなしく、巨大な怪物と化した弟は、ギガボウラーとの戦いを繰り広げていた。

そこに、西本からの緊急通信が入る!

「サトルくん、サトミくん、大変だ。東京に女性型の巨大ロボが現れて陸軍と交戦中だ。すぐ戻ってきてくれたまえ」

 しかし、それどころではない。(これが敵の巧妙な作戦だったのだが)

2体の戦いは、ビーファイターカブトのカブテリオスVSクワガタイタンのように、全く互角だった。

 ギガイキングを倒さない限り、東京には戻れない。だが、敵は強すぎる。そのときだ。

木の枝をターザンのように使ってジャンプしたきっちんが(生身!)、ギガイキングの左目にとび蹴りを食らわせたのだ。落ちていくきっちんを片手でつかみ、片手で目を押さえるギガイキング。これにはギガボウラーも声が出なかった。

 「さあ、ギガボウラー!チャンスよ!アタシごと撃って!」

きっちんが叫ぶ。

 「そんなことは出来ない(ない)!」

「早く!敵はもうすぐ正気にもどるわ」といい終わるかしないうちに、きっちんの体は落ちていった・・。「きっちん(ちん)!」

「くそぉぉぉぉっ!よくもきっちんを!!!!」

「コア・フラーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッシュ!!!!!!!!!!」必殺技コアフラッシュをぶちかます。腹から打ち出されたエネルギー球がギガイキングをつつむ。やった〜・・・。しかし・・・。ギガボウラーを研究して造られたギガイキングはこれに堪えた。

「そんな・・・・」コアフラッシャーを使うとエネルルギーが半分以下になってしまう。絶体絶命のピンチだ。

しかし、そのとき敵に異変が。「く、くるしい・・。体が裂かれる(れる)・・・」ギガイキングは苦しみ出した。そう、拒絶反応が起きたのだ。

メガイキングはメガボウラーのデストラーラゼ版コピーだ。若い男女の生体サイボーグを合体させていることは同じだった。しかし違うのは、メガボウラーが双子の兄妹であるのに対し、ソミンとユウキは赤の他人、しかもソミンは宇宙人である・・・。長時間合体していると、拒絶反応が起きるのだ。

 「とどめだ!」ギガボウラーは、ガトリングアームの一斉射撃でギガイキングをやっつけた、がとどめをさすには到らなかった。

「覚えていろ・・・」飛び去るギガイキングの手には口から血を流しているきっちんが握られていた。だが、それを追う力はギガボウラーには残されていなかった。二人は、合体を解くと、梨香ちゃんを救出した。だが、代わりにきっちんが攫われてしまった・・・・。

その間にも千葉方面から進撃する敵ロボは総武線の架線柱をハードル代わりに飛び越えながら東京に迫ってくる・・。

あやうし!

 どうする、メガボウラー!

 

(つづく)