メガボウラー12(ライトニング姉妹。編その2)

 

 ここは都内のとある盛り場。一人のイカレたあんちゃんがおっさんを殴りつける。おっさんも負けてはいない。

しかし、このガキ、よく見るとある人物とクリソツ。まるで本編の主人公、東サトル&サトミのように似ているのだ。しかも、その相手の性別が彼とは異なる点まで似ている。

「おっちゃん!オレを誰だとおもってんだよっ!」その鬼頭魔鬼に似た餓鬼・・・。彼の名を鬼頭幽鬼という。そこに、太目の初老の紳士が現れた。

「坊や。ここはワシに免じて引き取りねがおうか・・・・」札束をちらつかせる紳士。「タヌキおやじ、ありがとよ!」金をむしりとるとタバコをふかしながら店の外へ。しかし、彼はそこで屈強の男数人に取り囲まれボコボコにされ、何処となく連れ去られた。

 「なんや、鬼頭!遅いやんけ。みんなもう着替えとるで。はよせんかいな・・・」きつちんこと魔鬼は収録のスタジオに遅刻した。弟の幽鬼がきのう帰らなかったのだ。「だいじょうぶだよきっちん!あのコいつもルーズじゃん」「なっぴーもそう思うべさ。」メンバーたちは魔鬼を励ます。しかし、内心その人気に嫉妬している野口真理だけは違った。「ど〜せあの餓鬼、どこかのオネェ様と今ごろは・・・。ああ、いやだぴょん!」「何よこのチビ!」「あ〜!オイラの一番気にしていることぴょん!」取っ組み合いになってしまった。

「う・る・さ・い!静かにせーへんと、うち怒るで!」しかしここは『長女』祐子の鶴の一声でなんとか治まったものの、のちにしこりを残すことになってしまった・・・。

 その頃、火星気道上の海賊船では・・・・。

「ソミン!覚悟は出来ているか・・・?」「はい!」ソミンと呼ばれた少女は、薄い前掛けをしたたげで全裸の姿で、力強く答えた。

これから、改造手術を受けるのだ。彼女は、山賊惑星コーリャコリャ族出身で、かつ海の民黒潮族に育てられるという数奇な運命をもつ。しかも、その生い立ち、能力は宇宙海賊デストラーゼにとって、うってつけだった。そして今、彼女はその若い肢体を捨て、怪人サイボーグとして組織での地位を不動のものにしようとしていた。ハングリー精神の塊のような女だった。

「では、水野先生、お願いします」モーリーは退出した。

 その前に・・。

「テール殿。実はリコさまが西本のところで再改造を受けたとき、すばらしい資料を入手したのですわい。」

「何?」

「わしは密かにリコさまの体に発信機とカメラを仕込んでおきましたのじゃ。案の定、西本の奴はリコさまを人間の体に戻し、取り出したメカを分析・・。フフフ。そこがワシの狙い。奴は部品をコンピューターにかけて調べるはず。ところがそのことによって逆にワシの手元に奴の研究の全てが手にはいったのですわい。フォッフォッフォッ・・・。」

「さすが先生」一堂感激する。地球を狙いはじめてから、苦杯を嘗めさせられたメガボウラーの秘密をついにゲットしたのだ。そして、これを本に、デストラーゼ版のメガボウラーとでもいうべき新サイボーグ兵士を作り出すことにしたのだ。メガボウラーの強さのひみつのひとつに、男女合体があった。そこで最近影の薄いモーリーが、子飼のソミンを提供することにしたのだ。彼女はモーリーが親代わりに育てたのだ。

 さて、エプロンさえ脱ぎ捨てたソミンの体は手術台に乗せられ、手かせ足かせがつけられる。静かに目を閉じるソミン。まぶたに浮かぶのは遠い日のふるさとの思い出か・・。麻酔が掛けられる。チュイィィィィんと不気味な音をたて、剃り上げられた頭に丸ノコが迫る。同様に、腹部も開かれ、腸がつまみ出される。そして、大切な部分は大きく開かれ、卵巣、子宮などが取り出された。残った肉体は、水野が発案、西本が完成させた生体ミキサーに掛けられ、分解・圧縮されてコアの素になる。その頃、隣の工場では義体の製作が急がれていた。2体。

 隣の手術台では、同様に一人の少年が改造されている。その顔は、ライトニング姉妹。の看板娘、きっちんにうり二つだった。

二つの義体に、脳を収めたカプセル、精巣・卵巣を組み込んだ人工性器、最後にソフトボール大のコアが組み込まれていく。強化プラスティック溶液の浴槽に漬けられた2体は、すでに人間の姿になっていた。

 第二工場では、バイキング戦士のような黒一色のと赤と黒の甲冑が作られていた。

 

 今日も魔鬼は収録にこなかった。しかし、何故か今日祐子は上機嫌。真理が、ダニーズの某(『ダニーズ』とはキティちゃんの彼氏ダニエルにちなむ人気男性アイドル集団)との合コンを段取ったからであった。「のぐちぃ・・・。あいしてるで・・。ブチュ。」祐子は無類のキス魔。

「祐ちゃん、子供が見てるでしょ、みっともない。」良識派の安田がたしなめる。だが、

「こら、恵坊、あんた妬いてるんとちゃうか?でもな、のぐちはほんまウチの女なんやで。しゃーないか、ほんじゃ、特別に恵坊にも・・。」「ブチュ・・・うっ・・おぇ〜」

 「どうしたの、祐ちゃん!」「あ、姐さん!」

「コラ恵坊!あんた納豆くったやろう!ウチは関西人やから、納豆は嫌いなんやで!」

 普通なら、ここで、なつきが、「なっぴぃーも喰ったべ。祐ちゃんの分もあるさ」とか言ってその場を和ませるのだが、あいにく今日はグループ内ユニット「三匹のこぶた」(メンバーは、なっぴいのほか、乃木と神護の3人。小柄で食いしん坊の3人が選ばれた童謡グルーフでお子様が対象。同様に長身のかおるとやっすぃは、「ひまわり」というユニットで活動している)のイベントで不在だった。このグループで、祐子を怒らせるということは、そのままいじめの対象になることを意味した。祐子の腰巾着の真理は、ここぞとばかり罵った。「くせーんだぴょん!」恵は飛び出していった。

 その帰り道、一台のミニクーパーがヨタヨタと走っていた。恵の一件で合コンがお流れになって自暴自棄になった祐子はかなり酔っているにも関わらず、愛車を飛ばした・・・いや、ミニ特有のおんぼろのためヨタヨタ走っていた。しかしそこに、二つの影が立ちふさがる。ガラガラどっか〜ん!ミニはひっくりかえった。運良く、夜間ロードワーク中の東兄妹が通りかかった。「あ、事故だ!」「それにしては様子が変よ」「とにかく行ってみようぜ!」

 ミニは畑にひっくりかえっていた。夜中ということで誰も見ていないだろうということで二人はビルドアップし、車を引き起こした。なかには、ライトニング姉妹。の長女、長沢祐子が血を流して蹲っている!「あ!長沢姐さん!」「それより早く先生のところへ!」

 「そうはいかないぜ!」暗闇の中の二つのシルエット。バイキングのような角を生やしたサイボーグが2体、そこに立っていた。

「わたしは・・・。貴様らを倒すために造られた戦士。メガイキング1号・ソミン!」「オレ様は2号・ユウキだ!」

 いかにも強そうな2大戦士の挑戦をいきなり受ける二人。しかしこのままでは長沢祐子の命があぶない!

 「くそっ。サトミ、ここはぼくが上手く戦いながら引き離す。その間に姐さんを頼む!」「オーケー。気をつけて」

「ハハ・・。オレたちに一人で挑むなんて、無謀だぜ。こっちから行くぜ。アンカー・アーム!」ユウキが叫ぶと、その腕に大砲のようなものが装着され、そこから勢いよくロケット噴射で鎖つきの碇が飛び出す。モロに食らったメガボウラー・ブルーギアの肩に鎖が絡む。

「うっ・・この技は・・まさか?」似ている。あまりにも、自分のアタッチメント攻撃に。一方、祐子をかかえてローラーダッシュしてクリニックに急ぐレッドギア=サトミにはソミンが迫る。なんと、ソミンもローラー走行している!しかも、こっちより早い。

 あっという間に追いつかれてしまった。不味いことに、一応首都圏ということもあり、野次馬が続々現れる。今回ばかりはもみ消しも難しいようだ。

 「うわぁ!凄い特撮だ!」「どこの大学の研究会だろう?」幸か不幸か、この乱闘を大学のオタクサークルの撮影だと思ってくれている。

 さてちょっと場面変わってブルーギアVSユウキ。鎖に絡め捕られたサトルは至近距離からガトリング砲を浴びる。しかし、その装甲はこれに耐えた。かえって鎖が砕け、自由を回復。一瞬の隙を突いて、ハンマーパンチを眉間に射出!のけぞるユウキ。一方、サトミとソミンの女同士の戦いは、怪我人を抱えたサトミが圧倒的不利。一歩一歩間合いを詰められ、絶対絶命。ソミンの持つビーム短剣が、ゴーグルに突き立てられようとしている。そのとき・・・。

「うわぁ!祐子が死んでいる!!キャー、キャー」突然異常に高いオクターブの悲鳴が。そこには夜で暗い上血とオイルにまみれて顔はよく見えなかったが、小柄で金髪のツインテールの女がいた。ライトニング姉妹。の野口真理だ。彼女は祐子の車に同乗していたのだが、小さいため大破した車の残骸の隙間にすっぽりとはまって身動きが出来なくなりそのまま失神していたのだが、大きな傷は奇跡的に無く、流れ弾の命中によりびっくりして起き上がり残骸からの脱出にも成功したのだ。そして、ビームや爆裂するサイボーグ同士の戦いに割り込んできたのだ。

「祐子!祐子!ゆうちゃん、・・・起きろよ、死んじゃうなんていやだよ〜。なんでオイラをのこして先にいくんだよぉ・・ばか、バカ・・・」

動かない祐子にすがりつき泣きじゃくる真理。すると、突然ソミンが苦しみだした。実に都合のよい話だが、真理の超音波ボイスの周波数が、ソミンらコーリャコリャ族の脳に有害な周波数だったのだ。

 野次馬たちが俄然注目する。「おおおっ!野口だ!すげー!」「ライトニング姉妹。が出ているってことは、素人作品じゃなく、お正月の映画かも知れないぞ・・。」

 そのとき、また違う絶叫が・・・。「うるさい!」「ひとが寝ているっていうに、うるさいやっちゃな・・・。だまっとき!」

何と死んだと思われた祐子がむっくり起き上がると、野次馬にむかって怒鳴りつけたのだ。

「うわぁ・・・姐さんだ・・・姐さんが怒ったぞ!」「血のりとかのメークもリアルだ・・」

「やから、うるさいっていうとんねん。いね!」これにはたまらない。ただでさえ迫力満点の祐子が血まみれでどやすので野次馬たちは退散。

超音波でダメージをうけたソミンとサトルとの力比べに負けたユウキも、舌打ちをしながら退却した。

 「ゆうちゃん、生き返った・・。バカ祐子!心配したんだぞ!!!!」真理がポカポカなぐる。そのとき、祐子は初めて自分が重傷を負っていることに気づいた。「なんやこれ?血やんけ・・・」バタ。祐子は再び倒れた。

 その間、変身を解いたサトルとサトミは、祐子と真理を連れてクリニックへ急いだ。

かくして新たなライバルの出現、二人と互角以上の強敵・・。はからずもライトニング姉妹。の野口真理の活躍?で辛くも撃退したものの、これはこれから始まるライトニング娘。を巻き込んだ恐るべき戦いの幕開けに過ぎなかった・・。

 そして、次の朝・・・・・!

(12話終わり)