メガボウラー10話 逆襲のリコ後編

 

部活か終わり、帰宅した剛とみゆきが見たものは、荒らされた病院と気絶しているスタッフたちだった。

「しっかりしろ!」受付嬢や看護婦、医師らをたたき起こす剛。

「あ、ぼっちゃま・・。先生が女に攫われました・・ガク」

「お父様が!」悲鳴をあげるみゆき。

「すぐサトルたちに知らせるんだ!泣いている場合じゃない!」

 そのころサトル&サトミは帰り道本屋に寄って、「月刊トライ」を立ち読みしていた。

「ねぇ、ねぇサトル、見て見て!この記事!」

うれしそうにはしゃぐサトミが開いたページには、

「何々?高校フットボール界のジャンヌダルク、南武高校東サトミ選手(一年)、奇跡の大逆転ペナルティキック!」という写真入の記事が載っていた。そこには放物線を描くボールと足を高く蹴り上げたサトミの姿が。

 「すごいでしょ、ね、だからご褒美にクレープ買ってよ、こんどできた原宿クレープ美味しいんだから!」

「威張るなよ、そんなことで。女がフットボールしているのが珍しいから記事になっただけじゃないか。ボクなんてもっと注目されているんだぞ」

「ひどーい!男女差別!かよわい妹をいじめる非道兄貴!」「背筋力120のゴリラ女のどこがか弱い妹だ!」というぐあいにいつもの喧嘩がはじまった。

 そこに悲鳴にも近いみゆきからの電話がサトルへ。「お父様がさらわれたの!早くきて!」同時にサトミの電話も非通知で光る。「何よこの一大事に!どうせワン切だろ!」

しかし・・・。その声は聞き覚えのある甘く、しかし邪悪な声だった。 

 「こんにちは、東サトミちゃん。あたしの書いた記事いかがだったかしら?ところで大変みたいねぇ、お宅の先生・・・」「あなたはリコ!」「覚えてくれていてうれしいわ。

ところで博士うちに遊びにきているんだけど・・・。どう?あなたも来てくれない?」

「ふざけんなよババァ!あんたが攫ったんだろ!サトル、行こう、発信地は分かったぞ!」

「ちょっと待って。バレちゃ仕方ないわね。でもサトミちゃん一人で来てね。ボウヤが一緒にきたときはセンセイの首はちょんぎれちゃうんだから♪ふふふ。じゃあ、第八埠頭でまってるわ」

 「畜生!」(二人)

「よし、サトミ、一人で行って博士を頼む。俺は研究所に行ってとりあえずキャプテンの指示を仰ぐことにする」「オーケー!まかせな♪」二人はそれぞれ分かれて目的地に向かった。サトルは研究室に戻り、いきさつを聞いた。「女狐め。親父を返せ!」怒り狂う剛。

いっぽう最初は驚きと恐怖から自我を失って泣きじゃくっていたみゆきは立ち直り,才媛らしく手術記録を調べた。「あの人、お父様に生身に近い体にしてもらったんだわ。でも何故?」

「恩知らずめが!俺様が飛んでいって」「だめ!そんなことしたらお父様が殺されちゃうわ」「それじゃこうして!」怒り狂う剛とサトル。「頼んだぞ、サトミ!」今はそう祈るしかなった。

 

風が吹きすさぶ第八埠頭。そこにはリコが約束どおり待っていた。

「さすが正義の味方ね。ちゃんと一人で来てくれた。」

「ふざけんなくそババァ!先生を返せ!「ババアですって!生意気ね!アタシだってまだ若いのよ!この生意気な小娘をこらしめておしまい!」飛び出す戦闘員。

「あ、それからセンセイは無事よ。これから協力してもらうんで殺したりはしないから安心してね。でもこの美貌を誇るアタシをババァ扱いしたあなたには死んでもらうわ!」

 いっせいに群がる戦闘員。だがサトミはビルドアップしない。この程度の敵ならば、フットボールで鍛えたタックルで難なく倒すことが出来るのだ。その激しさはまさに男顔負けで、キッカーにしておくのがもったいないほどのものだった。

「生意気ね!仕方ないわ。奥の手よ」リコが頭に変なヘッドギアを着け、携帯になにか打ち込んだと思うと、向かい側の倉庫が小爆発した。そこからは、等身大の女性型ロボがあらわれた。どことなく、リコに似ている。

「これがアタシの分身、バトロイドリコよ!」バトロイドリコは、水野に押されて肩身の狭くなったデストラーゼ本来の技術者が総力を結集して作り上げたアンドロイドだ。リコの細胞を培養したバイオチップの働きとリコの身体能力をコピーした上10倍にしたパワーを持ち、ヘッドギアの力でリコの思いのままに操ることが出来るのだ。つまり、メガボウラーの変身を目指したもののそこまでの技術がないため、戦闘体を別に作って脳波コントロールすることにしたものだった。バトロイドの後ろ回し蹴りがサトミに炸裂!わずかに体をひねって腹部への直撃は避けたものの、おしりにしたたかにヒットした。

 「やったな!よ〜し!こっちも行くぞ!」「ビルド☆アップ!」

サトミの体を赤い光が包む。その光の中でサトミの衣服や皮膚は融け落ち、肉が焼けると同時に淡いピンク色に輝くメカの体が徐々に形作られる。肉は焼けているのではなく、分解されてコアの中に吸収され、入れ替わりにコアから噴出す金属粒子が代わって体を作っていく。これが、変身の秘密だ。そしてそこに、まず背中とわき腹をガードする蛇腹、肘当て、脛当て、肩パットが次々装着される。次に赤いショルダー、両手両足の装甲が重なり、ヘルメットも装着される。最後にフェイスガードが降りアイシールドが顔をガードし、腹部のコアのカバーががっちりと固定される。メガボウラー・レッドギアの完成だ。

 「行くぞババア!」「なによ小娘!(バトロイドはリコが話したとおりの声を発する)

激しくぶつかり合う2体。しかし力比べはレッドギアに分があるようだ。そこで間合いをとったバトロイドはゴルフのドライバーのような武器を取り出し、地面に散らばらせたエネルギー球体を打ち込んできた。しかし重戦車なみの装甲を誇るメガボウラーにはききめがない。しかしその一発が比較的弱いひざの裏側のジョイント部分に命中し、ガクリとひざを落とす。勝誇るバトロイド。

 一方、研究所では変身の際の発信によりサトミがビルドアップしたことを知った。つまり怪人の出現を意味していた。しかし博士が人質になっているため救援にいけずにいた。それどころか、こちらにも別の怪人が侵入してきた。それは、ハッファローのような巨人だった。それは怪人などではなく、デストラーゼ四天王の一人猛牛将軍エディだった。

 ひそかにリコの動きを監視していたキャプテンテールが、送り込んできた刺客だった。

 これは、サトミの救援どころではない。サトルはすぐビルドアップしてこの強敵と戦った。しかし、全く歯がたたない。常識ばなれしたパワーなのだ。彼は、かつてデストラーゼと勢力を2分していた宇宙山賊バッファロー団の生き残りで、折りをみて組織ののっとりを企てる野心家でもあったのだ。

 さて、視点をサトミVSリコにもどそう。

勝誇ったバトロイドはこんどはアイアンのような武器で動けないレッドギアを痛めつける。しかしレッドギアは馬乗りになってきたバトロイドの顔面にハンマーパンチを射出。吹っ飛ぶバトロイド。しかし足のアーマーの関節をやられた彼女は重い体を引きずるように戦うしかなく、体勢をととのえたバトロイドのビーム乱射を一方的に受け止めるしかなかった。軽快なフットワークを封じられ、ピンチに。しつように損傷部分を狙うバトロイドにレッドギアは再び倒れた。今度は逆に顔面を殴られる。しかし、そこは2重のフェイスガードでがっちり守られているのでそうかんたんには致命傷は受けない。しかし敵もさるもの、クラブの石付の部分でゴーグル部分を激しくつついてきた。僅かに亀裂が入る。ディスプレーが乱れてきた。畜生!サトミは決心した。幸い骨格には異常はない。重いアーマーを脱ぎ捨てて捨て身の攻撃をしよう、と。「ビルドアウト、ビルドチェンジ!」とかろうじて叫ぶと、アメフトの防具を模した赤い装甲がはずれ、メカ剥き出しの素体サイボーグに。そしてすぐに、対加納姉妹戦で初使用した、ライトアーマーが装着される。簡単な胸当て、肩当、膝当て、ナックルからなる防具で、ヘルメットはフェイスガードを外してそのまま使用する。これは、ブルーギアにはないレッドギアだけのバリエーションだ。

 この体では敵のビームを受けると致命的だが、それを補ってあまりある軽快さを誇る。

「ここからが本番だぜ」ふたたび組み合う2体。ライトタイプになると、少しは?女戦士らしくなったメガボウラーレッドギアと宇宙のナイスバディ、リコを模したバトロイド。かつてない華麗な戦いがここに繰り広げられる。しかし、ここはやはりキャットファイト。お互いのセクシャルポイントの責め合いになるのは必定だった。しかも、バトロイドのそれはリコ本体とリンクしているようだ。サトミがバトロイドの胸の装甲を握りつぶすとリコがもだえ始めた。こんどはサトミの股間に剥き出しになっている太もものケーブルの付け根から指を入れてアーマーーパンツに隙間を作り、そこからさらに指を入れてくるバトロイド。人工性器に触れられぴくっともだえるサトミ。ついに、赤いアーマーパンツはむ脱がされぱっくりと開いた人工性器が露わに。生体エネルギー発生装置として卵巣が組み込まれていることと、排水口(いわゆる尿道)の関係で、まるで女性らしくないつくりのサトミの体もここだけは女性型になっていた。いや、「これでもあたしは女なの!」と無言の主張をしているようでもあった。絶対ら絶命のピンチだ。

 いっぽう、サトルもまた苦戦していた。こちらも腕をひねりちぎられ激しく電極がスパークし、あちこちパンチを受けた痕がへこんでいて絶体絶命のピンチだ。そのとき、思いがけないニューヒーローが現れた!横たわり、その頭部を今にもエディに踏み潰されようとするサトル。彼が見たものは、黒いギアをつけた、巨大なメガボウラーだった。

 「まだまだ修行が足りぬぞ、サトル!」その声は、西本剛キャプテンのものだった。

実は、サトル・サトミに先立ちプロトタイプとして改造されていたのは剛だった。しかしすでに成長しつくしている剛は生体エネルギーの出力が不足し、パートナーに予定したみゆきは体が弱く改造できなかったため、日の目を見なかったはずの幻の巨人、メガボウラーダークギア、又の名をメガボウラージャイアント!体格もパワーも、エディと互角だ。

 いっぽう。こちらはサトミ。女の部分を攻められたうえ、剥き出しのケーブルを傷つけられて絶体絶命。股間からはオイルを垂れ流し、目はうつろに。これでここに男性タイプの怪人でもいようものなら、処女を奪われ、そしてそれはメガボウラーとしての機能を停止させるキーでもあった。立ち上がれ、サトミ・・。しかしそのとき、馬乗りで攻めるバトロイドが突然狂いだした。同時に胸に手を宛て泡を吹いて倒れるリコ!

 みゆきが、博士がのこしたデーターから、リコの人工心臓の遠隔操作を行ない、心不全に陥れたのだ。これは万が一にそなえてひそかに組み込んでいたものだった。形成大逆転!サトミは立ち上がると博士を救出した。博士は、リコの心臓をマッサージするとふたたび動きが正常になった。触診によっても回復できるようになっていたのだ。逆に縛り上げられ捕らえられるリコ!「くやし〜!」

 「サトミくん、サトルくんがピンチだ。行ってあげたまえ!」手持ちの工具でサトミの破損箇所を応急修理すると、サトミは再び重装タイプにチェンジしてコントロールを失ったバトロイドを倒すとサトルのもとに跳んでいった。そのころ、エディは剛によって倒されていたが、剛はビルドアップを解除しなくてはならなかった。実は、サトル・サトミから発生するエネルギーを詰めたパックを使って戦っているメガボウラージャイアントは、わすが15分しか戦うことが出来ず、かつビルドアップも研究所内でしか出来なかったため、今まで登場しなかったのだ。しかし、倒されたエディは巨大化した。傷ついたサトル。もう戦えない剛。そこにサトミがさっそうと駆けつける。「サトル、だらしないぞ!さあ、合体よ!」「おう!」「ジェミニシンクロンビルドアップ!」二人は合体した。

 兄妹の心がひとつになったギガボウラーに、エディはもはや敵ではなかった。あっけなく大爆発を起こすエディ。これで四天王のうち、3人までを倒したことになる。

(リコ・・・捕虜。レオ・・。離脱)

 さて、とらわれの身になったリコの処遇だが・・・。

「おい女狐!よくも親父を痛い目にあわせてくれたな!」剛の巨大な手が首をしめる。苦しむリコ。「お願い、ゆるして!組織を抜けたいのは本心よ!でもあんたたちに仕返ししたかったから・・。でも完敗。好きにしていいから命だけは助けて!」

 「虫のいいことを!」

そのとき、博士が言った。「放してやろう」「え〜!」

みゆきも、「この人はそんな悪いひとじゃないわ。育った環境が悪すぎたのよ」

それを聞いたリコは泣き出した。母を早く亡くし無法者の中で育ったリコ。はじめて文化的なものに触れた地球での生活。やっと人並みに、女らしく生きていける。そのためにも、この星は父の勢力化にしなくてはならない。そして、無法者でもやはり自分は父が好きだと・・・。

 「ま、いいか。その代わり貴様の生命侵奪権は親父が握っていることを忘れるなよ!出て行け!」思い切り尻を蹴られてつまみ出されたリコは何処となく去っていった。

 デストラーゼ本部では、この失態は諸兄に値するということで追手を差し向けようとする声があがった。しかし、娘にだけはめちゃくちゃ甘いキャプテンテールの鶴の一声でお咎めなしとなったが、以来アジトにリコは帰ってこなかった。そして、エディをも失ったデストラーゼ。キャプテンテールは焦っていた。「畜生め。地球人、やるじゃねえか・・」 

そのころ、吹き飛んだエディの残骸から脳髄カプセルを回収している老人がいた。水野教授だった。「フォッムフォッフォッ・・・。さて、こいつをワシの僕として蘇らせるとするか・・・」デストラーゼ、西本両陣営にとって不気味な存在となった水野の陰謀の目的は一体?負けるなメガボウラー。

おわり。