メガボウラー第8話・孤独なる若獅子

 

「バシッ!」わー!わー!

「タッチダウン!」東サトル選手、見事なタッチダウンです!

おっと、ここでキッカー登場!

「サトミ、出番だぞ」「まかしとき!まったく、もっと出番ふやしてくれよなぁ、みんなぁ」

 サトミはキッカーである。味方がタッチダウンを決めた後に登場し、ゴールを狙うのだ。

けっこう目立つ、花形ポジションのひとつである。もっとも、サトミはボールではなく男どもを蹴倒してフィールドを駆けたいのだが・・・・。

 「パァーン」。見事な放物線を描いてボールは飛ぶ。決まった。これで逆転だ。

「やったぞ、サトミ!」みんなが駆け寄る。

 今日は、南武高校と米軍子弟チームの練習試合だったのだ。

その帰り道・・・サトミは、相手チームの金髪青年とばったり出くわした。

「ヘロー!ナイスキック!、ベィビー」

「へ、ヘィ!な、ナイスガイ、オーケー?」(何この外人?このサトミ様をナンパしよう、てんの?)

青年は、サトミに声をかけてきた。彼の名はバーク少尉。海兵隊員だという。

英語が苦手なサトミだが、同じフットボウラー同士。フットボールの話題で意気投合。

今度の休みにまた会う約束をした。

 

 「何?外人野郎とデート?気をつけろよ・・・何されるかわからないぜ。貞操帯買ってこなっきゃ」

「びしっ!」「ばーか、何いってんのよ。陸軍と海軍の試合見に行くだけだよ。」

また殴られてしまったサトルくん・・・兄としてのプライドはどこへやら・・・・。

 

 さて、休日がやってきた。サトミは珍しくおめかし(セーラータイプのチビTに、白のホットパンツ)して出かけていった。(心配だなぁ・・よし!キャプテンと一緒につけよう)

そう決心したサトルは、剛に「米軍の試合を見て研究しましょう」と連絡し、サトミに見つからない位置から見物することにした。

「おい東!サトミの奴、どうにかしたのか?よりによって外人なんかと・・・」なにやらものすごく不安そうな剛。

「そうなんですよ、先輩。僕、あいつのこと責任持って嫁に出す、と死んだお袋と約束してるんで・・・」「バカか?お前。」

 とにかく、サトルたちは、サトミと外人がくるのを先回りして待っていた。

しかし・・・サトミたちは来ない。「まさか、あの外人にたらしこまれたのでは?」

二人は、顔を見合わせた。

 さて、サトミもまた、約束の公園で彼を待っていたのだが、時間になってもこない。

「どうしたのかなぁ、あいつ・・・もう試合はじまっちゃうじゃない・・」

そう思ったとき、「キャー」という悲鳴が。見るとライオンの顔をした男が、女性を襲っている。「なによあれ。ライオンのぬいぐるみを被って女の人を襲うなんて!ゆるせない」

サトミは、敢然とライオン男にタックルして、女性を逃がす。しかし、ライオン男は、強い。というより、人間ではないようなのだ。

「まさか、サイボーグ?」そのまさかだった。「ガォーツ」ライオンは、本能の赴くままに牙を剥き出し、サトミに襲い掛かる。

「ビルド★アップ!」サトミはついに、メガボーラー・レッドギアにビルドアップした。

ライオンの鋭いつめと牙が、サトミを襲う。人間でも、機械でもない、野性的な力。初めて出会う強敵に、サトミは恐怖を覚えた。

 そのころ、しかたなく試合を見ていたサトルたちだったが、「まぁ、あの選手の中に外人はいるとして、サトミの奴は方向音痴だから、待ち合わせの場所を間違えたんだろう」と、楽観していた。「先輩!すごいインターセプトですね」「ああ、お前も見習え・・」能天気な二人。さっきまであんなにサトミの身を案じていたのに・・でも、やはりスボーツマン、というのは自分の好きな競技に夢中になると,他が見えなくなるものなのだ。

 さて、一方サトミは・・・・フットワークには定評がある彼女だが、相手の動きはパワフルかつしなやかで、まったく打撃が通用しない。まぐれでかすっても、急所を外れてしまう。その一方で、敵のパンチや噛み付きは強烈。まず、左手首を噛みとられてしまった。

「痛い!」ギザギザに食いちぎられた手首からは血と人工筋肉のシリンダーオイルが洩れ、

ケーブルがショートする。しかし、彼女は改造人間。すぐにアタッチメントを呼び出し、メガトンパンチに換装。左手は巨大なグローブと化した。「メガトンパーンチ!」渾身の一打が炸裂、ライオンは少しのけぞった。だが、決定的なダメージとはなっていない。逆に、ますます凶暴化したライオン男は、木よりも高くジャンプして急降下、サトミを押し倒す。

馬乗りになった敵は、サトミの顔を何度も殴りつける。しかも、足で完全に体はロックされており、もがいても跳ね除けられない。

彼女の頭は、ヘルメットで覆われ、顔面にはいかついゴーグルがはめられ、さらにフェイスガードのレールが取り付けられ、あらゆる衝撃に耐えられるようになっている。しかし、ライオン男のあまりにも強いパンチに、そのガードレールはまるで手芸のモールのようにいとも簡単にひしゃげる。

そして次の一打。今度はゴーグル越しとはいえ、顔面直撃となる。男か女かさえ判らぬほど機械化され、体型の変わってしまった胴体とことなり、首から上は16歳の少女、東サトミそのもの。それゆえに3重の仮面で覆われているのだが・・・

「キャー!」サトミは戦士であることを忘れて悲鳴を上げた。いくら男勝りとはいえ、やはり女の子。顔を傷つけられるのは怖いのだ。

 しかし、以外にも第2打は、胸だった。そこはそこでダメージが大きいのだが、もっとも厚い装甲で覆われており、それほどの打撃ではなかった。すると、やはり頭の方が効果的、と思ったのか、頭をつかんで地面に何度も叩きつけてきた。朦朧とする意識。

 「もう、だめ・・・」意識を失いかけたとき、さらに強烈な一撃が目を覚まさせる。

こんどは、地面に倒れたサトミ=レッドギアの下腹部を、足で踏みつけてきたのだ。

下腹部・・・そこには、女性であるサトミにとってもっとも大切な臓器・子宮があるところだった。改造されたこの体でも、生体エネルギー反応炉として機能している、大事な臓器だ。ここを破壊されたら、コアや脳にエネルギーを送ることも出来ず、変身をといたり、合体したりすることも出来なくなる。なにより、ヘタすれば死んでしまう。

 「グヒッー」声にもならない激痛。フロントアーマーの隙間から、黄色い液体が流れ出す。ショックで失禁してしまったのだ。超合金の鎧に包まれ、かつ改造された体であっても、この痛みは何よりも応える。しかも、その痛みは女性にしかわからないのだ。一撃、また一撃、ライオン男の振り下ろされる足で踏みしだかれる腹。そのたび、直接子宮に響く激痛。痛さのあまり、意識を失うことすらできない。まさに、体が内部から潰れ、目玉が飛び出しそうな激痛なのだ。あと1回踏みつけられれば、金属疲労でアーマーが蹴破られ、本当に子宮が潰れる、と思ったその時・・・逆にライオン男が頭を抱えて苦しみだした。

 やっとの思いでよろめきながら立ち上がるサトミ。しかし、今までのダメージのため、ついにフロントアーマーははずれ、その奥に組み込まれたメカ性器が露に。また、ガードレールが曲がりつかいものにならなくなったヘルメットは、このとき脱ぎ捨てた。

 さあ、反撃だ!・・・と思ったが、うずくまったライオンの体に異変が。なんと、あの白人青年の姿になったではないか・・・!

 おそるおそる近づくサトミ。

 「オー、サトミ・・・みーハ、モウイヤダ・・」

ビルドアップを解き、抱き起こすサトミ。罠かもしれない、などとは純真な彼女には全く無縁の言葉だった。

「バーク、バーク!しっかりして!デストラーゼに改造されたの?」

「チガウンダ・・みーハですとらーぜノカンブ、獣王子バークレオンナノダ・・・」

彼が言うには、彼は、しし座のある星の王子だったが、星が爆発し、カプセルで脱出し、宇宙の孤児となったこと、貧しさのあまり、悪に手を染めたこと、そのうち、デストラーゼに拾われ、素性もあって幹部に抜擢されたこと。そして、数年前、地球にきたとき、もう悪事がいやになって脱走し、アメリカ人青年の姿を借りて(ライオン男が本来の姿)、平和に暮らそうと思ったこと。(注 デストラーゼの地球進出は意外と早く、今から20数年前、当時のヘツド、モーリー(現参謀長)が、下見に訪れ、水野博士と出会ったことに始まる。

西本がまだ大学生のときである。このとき、水野はモーリーから、サイボーグの改造方法を学び、弟子の西本らと研究を開始するきっかけとなった)

 しかし、数ヶ月前、水野に見つかり、凶暴化回路を組み込まれてしまったことなどを話した。そして、今日はサトミがメガボーラーだとはつゆしらず、本当に試合を見にいくつもりでここに着たのだが、水野の司令電波が受信され、凶暴化・変身してしまったことを告げたのだ。

 「バーク、あたしといっしょにきて!あなたを直せる人がいるわ!」

しかし、そのとき、「ガルルルル・・・」という声を上げると再びバークはライオンに変身し、生身のサトミを襲ったのだ。爪によって引き裂かれる服。ホットパンツのボタンがはずれ、ピンク色の割れ目がこんにちはしてしまった。(サトミはいつもノーパン)

「バーク!やめてー」しかし、理性をうしなったバークは下半身も裸になり、シンボルを剥き出しにして襲い掛かってきた。

 そのとき、ようやくビルドアップ信号に気づいたサトルが駆けつけ、ドリルアームでバークの脳天を貫・・・「やめてー」サトミの絶叫に手元がくるい、ドリルはバークの右目に浅く刺さって止まった。目を押さえて苦しむバーク。

「この人、悪い人じゃないの。助けてあげたい」下半身すっぽんぽんであることも忘れてサトミはサトルに叫ぶ。

 「でもこいつは怪人じゃないか。こいつのために殺されたり、怖い思いをした人だって・・」といいかけたとき、トラクタービームがバークを包み、空へと連れ去る。

「バーク!」空に向かって叫ぶサトミ。その目には大粒の涙が。

サトルは、そんなやさしい妹にハンカチ黙って差し出すのだった。

(その後、ビルドアップを解いたサトルは、サトミに自分のジャージを穿かせ、自分はトランクス姿になって、帰った。)

戦いは終わった。しかし、後味がなんとなく悪い。

「何故とどめをささなかったのだ。次に会う時、奴は強化改造され、記憶も消されているに違いない」と西本はいうが、サトミは、バークの心の奥にあるやさしい本心をいつまでも信じたいのだった。たとえ、次に戦いの場で出会い、どちらかが倒される、という運命であっても。そして、サトルもまた、「真の悪は、人の弱みに付け込み、悪事を働かせる敵のボスだ、」と思うのであった。

(第8話・完)

 

次回予告

「んもーう!パハツたら!キャワイイ娘のあたしが地球人の小僧たちに酷い目に合わされたって言うのにバクチばっかり!フン!いいわ、このリコ様がパパもメガボウラーのボウヤたちも、ギャフンといわせてあげるんだから!」

というわけで次回は第4話で活躍?したリコさんの再登場。お楽しみに