メガボウラー20話

 新しい一年が始まった。新学期・・・。3学期は一年しめくくりの季節である。3年生にとっては卒業の季節。南武高校アメリカンフットボール部でもキャプテンの西本をはじめ多くの3年生たちが引退していった。が、彼らのほとんどは川の向こうの武蔵体育大学へそのまま進学するのだ。西本剛もすでに推薦(というかエスカレーター)入学が決まっていた。あのクリスマスの騒動以来、デストラーゼの攻撃は散発的で、東サトル、サトミ兄妹も部活のオフシーズンということもありひさしぶりに高校生活をエンジョイしていた。1週間前にひさしぶりにデストラーゼの怪人が現れたものの、戦いなれた2人はあっというまに倒してしまい、合体するまでもなかった。そして、バレンタインデーまであと1週間と迫ったある日・・・・・。

 インド洋を航行中の米空母「ユナイテッド・ステーツ」は、突如核爆発を起こし、消滅した。付近の放射能汚染は深刻なものとなったが、それどころではない騒ぎが世界中を襲った。自由の女神、ビッグベン、エッフェル塔など西側諸国の著名施設が次々と爆破され、さらにエルサレムが消滅した・・・・。直後、アラビアの新興国マリオネスタンのアブドラ・ビン・ワリオ将軍から、全世界へ向かって米英ナトーへの宣戦布告がなされた。そして、突如蟻のように地中から湧き出る兵士たちの前に中東駐屯の米英軍は壊滅。これを見た一部イスラム国家がマリオネスタンに迎合、世界は大混乱に陥った・・・・。

 しかし!なぜか日本だけは、対岸の火事のようにこの騒ぎを傍観していた。異常なほど廃退的、ことなかれ主義、無気力な国家に成り下がっていたこの国では、関心事はライトニング姉妹。の次期メンバーのオーデイションの結果や宇喜多テカルの結婚、根室哲也の破局などであった・・・。
 これも、改革を目指していた鳥島潤一郎前首相が凶弾に倒れ、その結果自保党が崩壊し、決定的指導者を欠くなかなりゆき上しかもいいかげんな経緯で永島重雄巨神軍終身名誉監督が総理大臣となってしまい、ますますその場限りが楽しければそれでいいじゃないかという末期的な世相になってしまったからなのだった。それでいて、外敵は存在せず、圧力をかけてきた米国もいまや大混乱。本来なら物流やその他のことで混乱が起きてもいいはずなのだが、すでに不景気もモノ不足もなんとも思わないように麻痺してしまった、というより暴動を起こしたりデモを起こしたりするのもめんどうくさい、という世の中になってしまったのだった。また、昨年来デストラーゼの攻撃で不可思議な怪獣・怪人・ロボットなどが暴れ回っており、普通の人間の戦争などそれに比べたらスリルのないものと映っていることも大きい。しかし、そんな世の中だからこそ、刺激を求める若者たちも多かった。
 そんな状況が一変したのは、かねてから不穏な動きを見せていた高句麗がワリオ側に立って参戦し、日本と百済に対して宣戦が布告され、同時にヘボドンミサイルが九州近海に打ち込まれた(射程不足と精度不良により命中せず)ことにより、はじめてパニックが巻き起こった。当時、この国では高句麗人は日本人と犬を食べると信じられており、その脅威に国民はおののいたのだ。
 政府もおくればせながら、永島首相が閣僚と与野党の党首を集めて緊急対策会議を開いた。
その顔ぶれは、永島重雄総理大臣兼巨神軍終身名誉監督(運動党)、林芳郎元総理(内閣特別顧問、自保党改革派だが実は運動党黒幕)、玉香菜季子外相、福沢論吉蔵相、鳩ヶ谷由紀彦平和党党首、土井垣賢子社共党委員長、仰木日景守旧党党首兼国土交通相、岩原義輝改革担当大臣などである。
 まず、口火を切ったのは林元首相である。
「えー、わが神国日本は、天皇陛下を中心とした神の国であり、三国人如きに蹂躙されることはゆるされないことであって、帝都が被害の出る前に直ちに敵勢力の掃討および三国人の国外退去をすべきである」
 それに対し、「憲法ではいかなる場合においても武力は行使できないものと解釈されております!!林さんは100年前の戦争で尊い命を無くした方のお気持ちが分からないのですか!!!」とヒステリツクにまくしたてる土井垣委員長。対する林元総理は
「だまれぇいこのアマ!!!非国民めが!!」
 か細い声で「喧嘩はいけません・・・。な、なかよくしようではありませんか・・・」とささやく鳩ヶ谷代表の声など聞こえない状態だ。
 さらに、玉香菜季子外相も「え゛〜、この件に関しましては、清国の意向を聞いてからにしたほうがいいと思います」と叫ぶ。これに対しても林は、「黙れクソババア!神国日本はシナ如きに頭を下げる必要などないわ!」と切り返す。さきほどから肝心の永島首相(面倒なので以下通称の「マスター」で統一)は、ヘラヘラとほほえんでいるだけだ。さらに隣に控えている関根潤之助官房長官にいたっては細い目をさらに細めて水戸黄門のような顔をほころばせている。
 「みなさん!もっと真剣に討議してください!」

たまりかねた岩原改革大臣が叫ぶ。岩原国防長官の長男で、この若さにして異例の抜擢をうけたヤングエリートだ。さすがは岩原ジュニア。
 そこで、出席者ひとりひとりの意見をまず黙って聴こうではないか、ということになった。
このとき、岩原国防大臣と自決党(民族自決党)の大沢党首の顔が見当たらないことに、誰も気づいてはいなかった・・。
まず、平和党の鳩ヶ谷代表が「ぼくは、戦争には反対です・・・・。人類が殺しあうことに加担することに、激しいいきどおりを感じます」と、言葉は憤っているものの今にも泣き出しそうな顔でボソボソと意見を述べた。とそのときである・・・・・。
 
ガタン荒々しく議場の扉が開け放たれた。
「あ、伸純!」おもわず岩原改革大臣が叫ぶ。そこには弟で岩原軍団員の伸純が軍団員を引き連れて完全武装して立っていたのだ。「兄さん、どけ!」兄を蹴倒した彼は手にした狙撃銃の引き金を引いた・・・。その弾はまったくそれることなく社共党の土井垣委員長の眉間を貫いた。
 集まったVIPの誰もが度肝を抜いた。鳩ヶ谷代表は失神し、失禁してしまった・・・。
 唖然とする一同の前に、姿を見せていなかった岩原裕太郎国防大臣が姿を現し、このように宣言した。
「本日より、この不肖岩原が、祖国防衛のため全権を掌握したことを宣言する!」すでに、陸海空三軍と警察は、岩原に賛同して行動をともにしており、やはりこの場に居合わせなかった自決党の大沢党首が東北で、関西では東村山真悟代議士が、それぞれ岩原に呼応してクーデターを起していた。
 拳を震わせて「何を!」と言う者もいるなか、突如、それまでヘラヘラ笑っていたマスターが立ち上がり、いっそう大きく笑った上で、
「おもしろそうじゃありませんか!ここはひとつ岩原さんにおまかせしようじゃないか!」
 決まった。この国最大のカリスマ、マスタープロ野球永島重雄・・・・。彼の賛同を受けて反対できるものなどいなかった。いや、いたのだがそれはことごとく消された・・・・。
 ここに、日本は岩原裕太郎を総統とする軍政が敷かれ、岩原軍団は陸海空軍の上位団体として扱われることとなった。そして、マリオネスタンと高句麗に対し、徹底抗戦をすることになった。そして、陸海空軍の募集に対しては予定を大きく上回る希望者が殺到・・・・。」

 ここに、真実に気づいているものが一人いた。天才科学者西本幸雄だ。
「報告によれば、敵兵士は撃たれても死なず地中から湧き出したという・・・。これはサイボーグに違いない!
陰で糸を引いているのは、デストラーゼに違いない!」

 だがまてよ?たしかデストラーゼのキャプテンテールは飲む打つの博打野郎でマスター以上の楽天家でバカのはず。こんな作戦や組織的攻撃をすることなんて出来るのだろうか?なにせ「あの」デストラーゼだ・・。
 次回からのメガボウラーからは目が放せないぞ!
(PS 今回サトル・サトミの出番なし・・・。ごめんなさい)